蒼き竜の伝承歌

□第一話
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―豊臣軍武将の石田三成に敗れ、伊達軍が壊滅し、生き残った者たちを連れ青葉城へ戻り幾日か経った。


『兄様―――‥』
「‥小雪か‥何してんだ?」


政宗から墓標の様に立てられた抜き身の刀に視線を移す。


『‥此処に、亡くなった仲間達を弔いました』
「―――(こんなに亡くしたのか‥俺は)」
『‥兄様‥』
「Ah?」
『今夜、月が真上に来た頃に‥此処へおいで下さいませ』
「―――っ」
『‥魂を昇華させる前に、お声を聞きたいでしょう?‥』


私の言葉に再び俯いた政宗。
そこへもう一つの馴染みのある気配。


「‥政宗様、小雪様‥」
「―――」


心配でやって来た小十郎を見て、政宗を呼ぶ。


『‥兄様、一旦屋敷へお戻りを‥傷が開く』
「それは小雪も一緒だろう?」
『そうね‥でも、後から行くわ』
「―――わかった、先に戻る」


その場から少し進んだ頃、政宗は振り返り沙雪を見た。


「(‥また負担かけちまうな‥)―――小十郎」
「―‥承知」


後ろに居る小十郎に瞳で「傍にいてやれ」と伝える。
それを正確に汲み取った小十郎は政宗に一礼をし、政宗が見えなくなった頃、小雪が居る場所まで戻って行った。







[執筆:2013/06/26]

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