蒼き竜の伝承歌

□第二話
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政宗と小十郎がこの場を去った後、私は予め用意しておいた清め酒の蓋を外し、墓標に似せた刀へ流して行く。
清め酒を掛けて行くこと中頃、ずっと我慢していた涙がポロポロと頬を伝って、嗚呼も少し零れ落ちる。

あの時にもう少し早く異変に気付いていれば、それか初めから城で待つと言わず政宗に着いて行っていたなら‥こんなに仲間を失わずに済んだんだ。

私が銀髪の青年と政宗の間に間一髪入り刀を弾き返し政宗を抱えて小十郎が負傷し持たれかかっている岩の傍に寝かせた私は、此方へ向かって来ようとする青年の前まで踊り出た。



『―これ以上、先へは行かせない』

「‥お前も、秀吉様の敵か?女の身で何が出来る‥」

『―私は貴方より、強いよ‥試して見るといい』

「‥そうか、――秀吉様の敵は斬滅されるがいい!!」



そうして私は始まる前に黒燿達を呼び出して、負傷している者から息を引き取った者、両方を奥州の地‥青葉城へ連れて行って帰って貰った。

全ての移動が終えるまで、私と青年は戦い続けた。
終わった頃には青年の腹には貫通する程の刺し傷一つと腕に数個の斬り傷があり跪いている、私は太股に深い斬り傷がついただけでその場を離れ青葉城へ帰った。

城へ帰ったらまず喜多の説教が待っていて、その後は太股の手当てしてもらい、息を引き取った者達をまた黒燿達に手伝ってもらいながら弔った。

そして今に至り、清め酒を全ての墓標へ掛け終わった頃には空の月が少し傾いて、月を見上げ未だ止まらない涙を流していれば後ろから優しく抱きしめられた。


「‥小雪‥様‥」
『―――っ‥ふぇ‥』


生きていればいつか人は死ぬ。
それは分かっているから今のこの状況が辛い。
優しく抱きしめられた事で更に涙が溢れ出して、そのまま膝から崩れ嗚呼を上げて泣いた。






[執筆:2013/06/26]

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