蒼き竜の伝承歌

□第三話
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漸く涙が止まった頃、抱きしめていた小十郎は私の背と膝裏に手を入れて抱き上げ近くの木の下に移動した。

―自分も怪我で痛い筈なのに、無理しないで欲しい

それに政宗に着いて居なくて平気なのだろうか‥。
小十郎を見上げて見るが、分からなくて「平気だろう」と勝手に解釈させて貰っている内に木の下へ胡座の上へ乗せられ再び抱きしめられる。

抱きしめられながらもう一度、幾つもの墓標を見た。


『―――小十郎』
「?」
『これから大変だよ、兄様が‥』
「‥奴に対する憎悪‥でしょうか」
『うん‥だから、小十郎が気づかせてあげて?』
「勿論、そのつもりですよ小雪様」
『でも―――‥』


そこで墓標から小十郎へと顔を向け、少し困ったような微妙な表情になりながら政宗の腹心であり、兄のような小十郎に届くように伝える。


『自分を責めないで』
「―――っ!!」
『背を守れなかったかもしれない』
「―――」
『でも、まだ兄様は生きているわ‥』
「‥は‥いっ‥」


更に抱きしめられる強さが増し、その腕と体は震えていた。

しかし、次にあの青年とどこかで遭遇したりなんかしたら問答無用で襲って来そうだな「斬滅するぅぅう!!」とか言って‥ははは‥‥‥‥ダメだ、恐すぎる!!

そんな感じで思考の海に漂ってれば、上から声が掛かった。


「―‥小雪様」
『?』
「身体は清めに行かなくて平気ですか?」
『‥‥‥あ‥』
「(忘れていましたか)‥小十郎が近くまで連れて行きます」
『狽竅A平気!歩けるし、小十郎の方が傷酷いでしょ!?』
「大丈夫ですよ、柔な鍛え方しておりませんから」
『‥あ‥ぅ‥』
「それに姉上からお願いされていますから‥」
『な、なにを?』


「歩かせるな‥と」


小十郎はニッコリと笑顔で言い切った。
姉弟そろって笑顔が素敵過ぎて恐ぇぇぇえ!!!


『‥‥‥‥‥‥‥‥‥ハイ‥オネガイシマス』
「(すみませぬ小雪様、姉上には逆らえないのです)」


コレは素直に従うしかなくて、拒否権は無かった。
かく言う私はニコニコ笑顔が恐い小十郎にお姫様だっこで竜神の祠(洞窟)に連れて行って貰ったのだった。





[執筆:2013/06/26]
 

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