よろず小説

□鉄パイプの怪
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ジョージは口元に手を沿え、短く唸る。

ケビンが「タックルで倒そうぜ!!」と言わんばかりに、目をキラキラと輝かせていたが。
それは流石に危険すぎるので、無言で制止した。


「ジョージ、これはどうかしら?」

ふと、その時。
アリッサが何かをジョージの目の前にかざした。

ワイン庫の薄明かりに照らされたのは。
鈍い光を放つ魔性の棒。


「…鉄パイプ?」

「ええ」

そう言って、いたずらにウィンクするアリッサ。

成る程。
確かに鉄パイプならば。
近距離武器にしては上出来の強度。

武器としては使える。
これなら敵を薙ぎ倒す事も出来るかもしれない。


「さ、行くわよ!!」

アリッサは鉄パイプを片手に立ち上がり、扉へと向かった。


「え…!!」

彼女の行動に、ジョージとケビンは肝を冷やした。
あろうことか。
非力な女性に、鉄パイプでゾンビと戦わせるなんて。


「待つんだアリッサ!!君では危険だ!!」

外に出ようとしたアリッサを、ジョージは慌てて制止しようとする。


「大丈夫よ!!伊達に死線を潜り抜けてきたんじゃないんだから!!」

そう言うと、アリッサはワイン庫から飛び出した。

ワイン庫には、取り残された男性陣2人。


「という事は…」

「アリッサの奴、敵を殴り倒して…」

ワイン庫の外からは。
アリッサの軽快なかけ声(?)と。
ある意味、可哀想な、ゾンビ達の悲鳴が聞こえてくる。

勿論。
鉄パイプの打撃音も。




「…ジョージ」

「ん?なんだいケビン」

「…もう少しの間ココにいようぜ…」

「ああ…実は私もそう思っていた所だ…」

情けない話ではあるが。
二人はアリッサの死闘(暴走?)が止まるまで、ワイン庫にとどまり続ける事にした。

悲鳴が聞こえない所からすると。
どうやら、彼女が圧勝しているらしい。

今だけなら、今だけなら。
ゾンビ達に同情できるような気がする。


それから。
アリッサが鉄パイプを見つけるごとに。
二人の表情が青ざめたのは、言うまでも無い。



Fin…?

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