小説:ボーボボ

□短篇小説置き場3
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あの子は何時も僕の傍にいて。
僕の言葉に、笑顔で返してくれた。

楽しそうに笑ってくれるあの子の顔を見ると。
僕の方まで、幸せになれる。
何時までも傍に居たい。
あの子の笑顔に包まれて、幸せなままに。


もし。
生まれ変われるなら。

君になりたいな。




―小さかった僕ら―



どこまでも続く青い空。
野原いっぱいに咲いた白い花。
時折髪を撫でていく暖かい風。

うん。
僕は、この場所が好きだった。
昼下がりの午後、ティーセットとクッキーを持って此処に来る。
暇潰し用に、買ってもらった布張りの厚い本も忘れずに。

此処に寝転がって本を読んでいれば。
必ず、あの子が来てくれる。
きっと今日も、来てくれるに違いない。
息を切らせながら、太陽の昇る方角から。


「しーびとくーん!」

…来たかな?

僕は本に落としていた視線を、声の聞こえた方へと向ける。
すると、太陽の昇る方角から、僕の待っていたあの子が来たのが見えた。

僕と同じ赤色の目。
サラサラの銀色が太陽の光を反射して眩しい。
あの子。


「こんにちは、へっくん」

本を閉じ、挨拶をする。
へっくんは「こんにちは」と返して、僕の傍に腰を下ろした。
ほら、やっぱり息があがってるね。
お家から此処まで、走ってきたのかな?


「うー、いつもしびとくんの方が一番乗りだよね」

「たまには俺の方が先に来たいのに」と言って、へっくんは笑う。
そんな君の言葉に、僕の頬は次第に熱を持ちはじめた。

なんだろう。
それって、僕に会う為に、わざわざ此処へ来ているって事なの…?
こんな、何もない様な場所に…?

僕は。
てっきり「何処かへ行く時の通り道」かと思ってたのに。
そう考えると、何だか嬉さ半分、恥ずかしさ半分という感じだね。


「…?どうしたのしびとくん?」

「えっ…?」

「かお、まっ赤だよ?」

へっくんに改めて指摘され、僕は頬に手を添える。
分かってはいたけれど、やっぱり熱い。


「カゼでもひいたの?」

そう言ったかと思うと、へっくんの手が伸びてきて。
僕の額に、触れた。


―どくん。

心臓が跳ね上がる。


「あれ?おでこはあつくないねー」

空いていた左手で、自分の額を触ってる。
どうやら僕に熱があるかどうか確かめているらしい。
「変なのー」と言って、へっくんは首を傾げた。

…可愛い。


「大丈夫だよ、僕カゼはひいてないからね」

「そうなの?」

額に触れていた手が、離れていく。

何故だろう。
へっくんの手が離れていく時、とても淋しいと思った。


「へっくんに会えてうれしいから、頬が赤くなったのかな?」

誤魔化す様に笑うと、へっくんも笑顔になった。
やっぱりへっくんには、笑顔が一番似合う。
だってね、君が笑ってくれると、僕も幸せになれるんだよ。
本当だよ?


「そうそう、今日はクッキー持ってきたんだよ。食べる?」

話の流れを変えようと、僕はバスケットに手を伸ばす。
蓋を開けると、中から甘い匂いを漂わせるクッキーが顔を出した。
それを見て、へっくんは、まるで宝物を見つけたかの様に、目を輝かせる。
どうやら気に入ってくれたみたい。


「うん!たべるー!」

そう言った君に、僕はクスリと笑顔を零し、お茶の準備にとりかかる。


こんな時間が。
ずっと続けば良いのに。

そう、思った。

僕に、電脳6闘騎士の話が持ち上がるまでは。





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