幼馴染以上恋人未満
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名前の意識が無いまま一週間が経ったころ、真琴はどこか気を紛わすかの様に泳いでいた。
「まこちゃんの泳ぎ方荒くなってきてるよ……」
「名前の意識が戻らないんだ。真琴の気持ちもわからないわけじゃない」
「チッ…………」
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――――――。
クラブが終わり家に帰ると名前の意識が戻ったと親から聞き急いで病院に向かった。
「名前!!………」
「!?――まこ…………どうしたの?そんなに急いで」
ベッドの背をあげて起き上がっていた名前は急に入ってきた真琴に驚く。真琴は名前の異変に早くも気づいた。
「名前………?」
「なぁに?………まこ」
そう言うと名前は微笑んだ。
「……………くッ…」
真琴は何も言わずそのまま涙を流した。
「まこ?…どうしたの?なんで泣いてるの?」
名前はベッドから降りると真琴に近づき涙を自分の袖で拭いてあげる
「うれしくて……名前の意識が戻ってくれてうれしいんだよ…」
涙を流しながら無理矢理微笑む。本当は辛いのだ。
「ありがとね……まこ。まこはほんと優しいね」
そう言うと名前は微笑んだ。真琴は強く名前を抱きしめ、名前も真琴の背中に腕を回す。
「ほんとよかった……ほんとうに――」
「うん。ありがとう――」
―――まこ。
その名前の呼び方で、真琴は名前に何が起こったのか悟った。
――名前は一部の記憶を無くしてしまったのだ。
そして噛み合わなくなった歯車は空回りし始める――――
2013.07.21