どりーむ
□第一話
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「おはよう!」
扉を開けながら、先ほど鏡で確認した全力の笑顔で挨拶をする。
「おはようごむべい」
同じく笑顔で迎えてくれた金髪の少年。彼は乃木流架。私の大切な親友だ。
先ほどドア越しに声をかけてくれたのは彼だろう。
そして
「おせぇよ……はよ」
不機嫌そうにしながらも小さく挨拶を返してくれた黒髪の少年。彼は日向棗。
私の大好きな人。
全然素直になれないんだけどね。
二人はこのアリス学園に来てから知り合った。
何も信じられなくなって、灰色になっていた世界に色を付けてくれた人たちだ。
「ごめんってー」
「俺は腹が減ったんだよ」
「棗は欲望に忠実だからね」
「うっせ」
「そういえばスペシャルのご飯も全部食べてるもんね。太るぞー?」
「俺は成長期だからいいんだよ。お前こそ食べ過ぎなんじゃねぇか?」
「なにおー!?」
三人でワイワイ話している瞬間が好き。
私はこの二人さえいれば他に何もいらない。
だんだん食堂に近づくにつれ、三人の口数が減っていく。
ザワッ・・・
食堂に入ると元々賑わっていた食堂内が、違う意味でざわつく。
私はこの瞬間が嫌いだ。
食堂のすみで黙々と食事を済ます私達。
さっきのじゃれあいが嘘のように無表情で食事を摂る二人。
もう最近では慣れてしまった日常。
そんな日常が、この日から変わり始めることをこの時の私は知りもしなかった。