ほのぼの小説
□第一章
1ページ/2ページ
翠鸞が王宮に囚われてはや一ヶ月。
その間彼女は外に出る事も叶わず、大きな金襴豪華な部屋で生活していた。
出ようとしても出れず、気力が削がれる。
付き人である女人が沢山つき、何ひとつ自分でする事が出来ない。
そんな女官は毎日翠鸞を睨みつけながらお仕事だ。
翠鸞はもう緊張ではちきれそうだ。
惣鸞に会いたいという想いが強くなり始めた時、初めてその重い扉が開いた。
一斉に微笑み、頭を垂れる女官達。
わけも解らず呆然と立ち尽くす翠鸞。
そして彼女は、とある人物と出会った。
綺麗な刺繍が施された藍色の服を身に纏った、長身な男の頭上には、後継者を示す冠。
この国の第一皇子である。
皇子は、とても整った顔立ちをしていた。
すべてを神が自ら手作りしたかのような、人形の様に整った顔立ち。
言葉では言い表す事が出来ない、圧倒的なオーラ。
綺麗な琥珀色の瞳に、金色の髪の毛。
細くも逞しい風貌の持ち主が、静かに部屋に入ってくる。
綺麗な琥珀色の瞳に、紅が映る。
見つめ合う事しか出来なくて。
皇子が口を開いた。
「名は?」
その声に、ふっと緊張が解かれた。
「人に名を尋ねる時は、まずは自ら名乗るべきよ」
皇子がふっと微笑んだ。
その通りだ、と。
「俺は凰。君は?」