うたぷり 夢小説

□第1小節 再会と想いと過去と
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嫌がる私の事も気にせず、龍也さんは教室の前へとやって来た。

「龍也兄の馬鹿…」
思わず小さい頃の呼び方をしてしまう。

だって彼は本当に兄の様な存在で。

「少し待ってろ。良いな?」

…その間に逃げよ。

「逃げるなよ?」
なんで解るのでしょうかこの人は。

「林檎!見張っとけ」

はーい、と二つ返事で林檎ちゃんが私を龍也さんから預かった。

「林檎ちゃん酷い…」

「大丈夫よ瑠衣ちゃんー。この学園は素敵なんだから」

そりゃ、早乙女さんの学園なら、素敵だろうね。

だからこそ、そこに私は不釣合い。

「ほらほら、怖い顔しないのー。笑った顔が一番可愛いんだからっ」

スマイルスマイルっ♪と林檎ちゃんは楽しそう。

これが、男なんて信じらんないや…。

その時、龍也さんが私を呼んだ。

「頑張るのよ瑠衣ちゃんっ♪」

背中を押され、教室に一歩入り…回れ右。

でもそこには林檎ちゃんが居て私を逃げさせてくれない。

「皆の目が怖い…!!」

「大丈夫ー、ほら行くー」

でも怖くて、一歩が踏み出せない。

すると龍也さんが、私を手招き。

「何?」

龍也さんの元へ走り、気づく。

教室に入った…!!

皆の視線が怖くて。

汗が。どうしよ…

「おら、転校生だぞー」

ザワザワとする教室内に、確実に見え隠れする悪意。

…!!

「ほら、名前」
龍也さんが言う。

私は緊張を悟られぬ様、名一杯低い声で言った。

「天霧瑠衣。作曲コース」

それだけで、失神しそうで。

後ろで支えてくれる龍也さんの存在が、ただただ有難かった。
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