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□華々
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あ、笑った。

三流映画みたいな言葉だけど、華みたいに綺麗な笑顔。








─────────華々─────────


am.6:00


「─…ア、キルア」


朦朧とした意識の片隅で自分を呼ぶ声。
顔を見なくても誰だかはすぐに判る声の主。

今すぐその顔を見たい欲と睡眠欲との葛藤の後オレは何時も睡眠欲を取る。

だって眠いし、今起きないでこのままいたら。


「全く…、寝起きの悪い奴だな」


呟くのが聞こえて脳に感知されるのと同時に頭に柔らかい感触が広がる。


来た、やっぱ撫でてくれる。


まるで猫を可愛がる様な手付きで俺を撫でるその手が、眠くて仕方無い俺は心地好くて大好きで。

撫でて貰ったら起きよう、何て誓いなんか何処かに飛んじゃって。
また眠たくなる悪循環が続いちゃう。


「…ほら、朝御飯が冷めてしまうぞ」


…それは戴けないかな、折角アンタが作ってくれたのに。


「ん…おはよ、クラピカ」


寝惚け眼を擦ってまさに今起きましたアピール。
俺って演技派かも。

ちら、と盗み見る様に向かい側のベットの端に座っている相手を見ると目が合ってにやりと笑った。
え、何その笑顔。


「…次は愚図らずに早く起きろよ」


そう言い残してぱたんと部屋の扉を閉めた。
状況を上手く把握出来ない俺一人になった部屋には、時計の秒針が一秒を刻む音と、俺の心音。


「あ-…、バレてたか…」


そうとだけ吐き出すとぼふんと後ろに倒れ込む。
不覚。

俺は確かにアイツより年下だけど、ゴンみたいに年相応な子供じゃ無いし、内面だけ見たらレオリオより年は上に思える。

…だからアイツも余裕だ-、何て思ってたんだけど。
アイツは俺よりずっとずっと大人で冷静。
皆で企画したサプライズも何時も見抜かれたりして。
どうやっても出し抜けない。
少しは焦るとか、無いのかな。


「…キルア、朝食抜きで良いのか?」


いつの間にか扉の前に戻ってきているクラピカ。
ばっと時計を見やるとぼんやり考え事をしてる間に10分経ってる。
やべ、意外に経ってるし。


「ゴメン、今行く」


短く謝ればすとん、と軽い音を立てて床に着地。
ベットから飛んで、着地地点はベットよりもクラピカの方が近い。
顔を見上げて見るとやれやれと首を振ってるクラピカ。

何だ、余り怒ってないじゃん。

良かった、と心の中で安堵するよりも早くクラピカに抱き付く。


「な…何だいきなり…」


あ、少し驚いてる。
目の中少しだけ赤いよ。


「クラピカ、好き」


抱き付いた所から少し離れて赤と蒼が混じる瞳を一点に見つめ真剣な顔を作り呟く。
…途端に両頬を摘まれ間抜けな顔に一転。

頬を掴む相手の顔に視線を持っていくと。


「知ってるよ、キルア」


ふにゃ、って効果音がぴったり嵌まる様な顔になってる相手を見て、拍子抜けした。

ほら、早く行くぞ。

頬を解放されても間抜けな顔は戻る事は無くて。
もう一度見てみたいな、あの顔。


「クラピカ、好きだ」


何、同じ事言ってんの俺。
ちょっとだけ恥ずかしい。
視界の端で振り向く相手が確認出来た。

そのまま全く…って続くかと思ったけど、何か、あれ?

顔と目が真っ赤。


「…知ってるよ、馬鹿者」


目の色が完全に変わる位動揺してる。
どうしたらいいか判らないで染まった頬を掻いてる。
さっきの顔とはまるで別物なんだけど。


でもその表情が表す意味が、何より嬉しくて嬉しくて。
朝御飯も起こしに来てくれるのも全部全部。
「俺」の為なんだって直感的に判った気がしちゃって。

嬉しくて仕方無くて思わずまた抱き締めた。

視線を上に持って行けばアンタはまた笑ってくれるんだろ?


「俺も知ってるよ、クラピカ」











華の様に笑う、なんて三流映画みたいな言葉だけど。

俺にとって、アンタは華だよ。






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