タイトル
□はちみつ
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耳障りの良い包丁の音。
焼き立てのスコーンの匂い。
朝を感じる鳥の囀り。
頭の冴えない俺に君が手渡すのは蜂蜜が入ったホットミルク。
ふわり香る蜂蜜が、余計眠気を誘う。
一口飲んで、座ったまま目を閉じようとすると君の困った顔が視界の隅に見えた。
いつになっても寝起きが良くないな。
そう呟いた君は俺の頬を撫でる。
温かくて更に眠りの底へ引き摺られていく。
その刹那頭を支配したのは唇への感触。
予想し得なかった感触に瞼を持ち上げれば目の前に犯人。
少し蜂蜜が多かったかな、何てぼやく。
そのまま朝の仕度に戻る君。
目の前に置かれたホットミルクを一口。
また一口。
このホットミルク、全然甘くないよ。
もっと蜂蜜入れてくれる?
君の口付けで味覚が狂ったみたいだから。
fin.