タイトル

□36℃
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暑い。
何でこんなにも暑いんだ。

扇風機の前で頭を垂れては床を見詰める。
…床って冷たそう。


「床に寝たら間違えて蹴ってしまうかもな」


頭の上から脳内を見透かした言葉が降ってくる。
判ったよ、床には張り付かないよ。

そんな意味を込めて声の主を見詰めては微笑んでみる。
嗚呼此方見てないじゃん。


「ねぇ、クラピカは平熱低かったよね?」


「至って普通だと思うが」


身を乗り出して質問しても素っ気ない返事しか返って来ない。
視線は手元の本に注がれている。


ずっと俺を見ようとしないから、その本面白い?何て言って後ろに回っては抱き締めた。


「…何をしている」


詰まらない様な呆れた様な声が短く耳に入る。


「何読んでるのかなって」


本当は触りたかっただけなんだけど、一応口実に。


「聖書」


「…は?」


てっきりシェイクスピアか何かかと思っていただけに思いの外間抜けた声が出てしまった。
呆然としてる俺を横目で見れば直ぐにその聖書に視線を落とす。
俺より古い聖書の方が魅力的なのかと聞きたくなる程集中している。

そんな事を考えると余計虚しくなって相手の首元に少し強めに抱き着いた。
ふわ、と品の良いシャンプーの香りとひやりとした肌。
自身の頬を相手の首に押し付ける。
適度に冷たくて心地良い。


「本当肌冷たい」


頬擦りしながら小声で言うとクラピカは擽ったそうに少しだけ肩を竦めた。


「御前が熱いのだよ、平熱が37℃近いのだから」


「クラピカだって35℃は可笑しいよ」


クラピカが此方を振り返って反論してきた。
本を横に置いて然り気無く俺の手を握る。
意識が此方に集中して嬉しい。


「人体的に問題ではない」


またそうやって素っ気ない。
まるで猫だな。


「じゃあ俺が抱き着いてれば少し上がるんじゃない? 体温」


そう言えば首に巻き付いてた腕をほどいて相手の腹部に移動させた。
抵抗を見せない処から嫌じゃ無い様。


「…そうかもな」


俺の腕に手を重ねてする、と撫でる。
指先もひんやり冷たい。

指も温めないと。
撫でる手をぎゅっと握ると緩く握り返してきた。


「早めに御願いするよ」


「御安い御用で」



此方をちらり覗く瞳。
嗚呼何て幸せだ、何て事考えては苦しくない程度にまた抱き締めた。




fin.





平均体温36℃の2人がテーマ。
纏まりませんでした…

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