パイレーツ

□OUTRO(ロー)
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ローの手が伸びてサンジの髪を梳き、そのまま耳にかけてやる。そしてあらわになった左耳に唇を寄せてそっとキスをおとす。大切なものに、神聖なキスを。

「なんだよ、どうしたんだよ」
「お前が好きだと思ってな」
「…今更」
「毎日思う、これ以上があるんだと驚かされている」
「はずかしいやつ」

きっともうすぐこの凪が止んでまた血に体を染める日が来るんだろう。
この穏やかな時間が幻なのか、争いの日々が偽物か、すでにローにはわかりたくもなかった。

「お前に惚れるだなんて、想定外だ」
「俺もだよ」
「幸せだ」
「…俺もだよ」
「怖ぇか?」
「ああ、怖ぇ」

ローはサンジの手を握り、そのままキッチンを出て甲板へと移動した。
あたりは真っ暗で空に見えるのは月だけ。不安になるほどに静かな夜はサンジを何故か不安にさせ、、その顔を曇らせる。風が通り過ぎ、サンジの金糸をふわりと揺らした。

「黒足屋、俺は過去も未来もお前にはやれないだろう」
「そう、だな」

ローは空いているもう片方の手を伸ばし、サンジの両手を自分のそれで包み込む。
サンジは見張りのルフィから見えてないかな、でももう少しこの時間を誰にも邪魔されたくはないなと思いながら、ローの顔を見つめ返し視線を絡ませた。

「愛を、誓ってもかまわねぇか?」
「…は」
「何もやれない、何もいらない、ただ愛だけを誓わせてほしい。今ここに俺たちがいて確かに愛があったことを」

まるで別れの儀式だとサンジは思う。
それでもローの顔を見ているとそうすることはとても意味のあることだと感じるし、何よりサンジもその誓いを立てたいと思った。

サンジはゆっくりうなずいてから花がこぼれるように儚い笑顔を浮かべた。
そんな顔をさせているのは自分だとローは悲しく、そして誇らしく思う。


広い海の上で、小さい自分たちは確かに存在し、確かに二人に同じものが生まれたんだと。
愛を誓った。







おわり
 

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