パラレル

□保健室の先生(ロー)
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窓から風が吹き込んでクリーム色のカーテンをなびかせる。
遠くから可愛らしいであろう女の子たちの声もささやかながら聞こえてくる。

サンジは一人、保健室のベットに横になっていた。

昨日は実家のレストランの手伝いをやってから、テストに向けて勉強をしていたために寝不足気味で、少しだけ眠りたいからと授業をサボり保健室へときたのだ。

前はよくこうやってつまらない授業をサボりに保健室にきていた。
美人な保健医のマキノ先生に会えるのが楽しかったのだが、もうじき生まれるあかちゃんのためにと産休に入ってしまった。
替わりに目付きの悪い男の保健医がやってきてからしばらく、男嫌いなサンジは保健室にくることはなかった。

「あー、ねみぃ」

久しぶりに来た保健室は誰もいなくて、不用心だなと思いながら鍵のかかっていないドアを開けて勝手にずかずかと入り込んだ。
勝手知ったるなんとかということで、今までにもよく使わせてもらっていたベットに横になれば、無意識のうちに天井の穴の数を数えてしまうのは何故だろうか。

横になりぼーっとしていれば体が重くなってきて、だんだんと眠たくなってきたのを感じ、まぶたを閉じる。
するとパタンパタンとスリッパの音がだんだんと近づいてくるのがわかり、続いてガラリと保健室のドアが開かれた。

サンジは誰か来たなとおもいつつ、うつらうつら眠りに入り込んだ意識のままで、声をかけれる状態ではなかった。




遠くのほうから聞きなれたチャイムが聞こえ、サンジはつられるようにゆっくり覚醒する。
起きなきゃな、そう思い目を開けてみれば目の前のパイプ椅子に座りジッと見つめてくる目付きの悪い男と目が合った。
ぎゃーっと悲鳴をあげて、サンジは飛び上がるほど驚いた。

「って、てててめぇ、誰だ!」
「俺はここの保健医だ、よく寝ていたようだな」
「へ?保健医…ああ、あんたがそうなんだ。あ、勝手に眠ってわるかったよ」

サンジはゆっくり体を起こすと、目の前の白衣を着た保健医が立ち上がりサンジのシャツの襟を掴み左右にがばっと開いた。
サンジは驚いてその手を払いのけ、ベットの上で後ずさった。

「ぎゃ!!な、なにしやがる!」
「暑いからといって、直接ワイシャツを着るんじゃねぇよ。肌着を着ろ」
「…なんで」
「それでなくても白ってのは透けるんだが…汗でシャツが張り付いて卑猥だ」
「あ?」

保険医はサンジの襟に手を伸ばし先ほど自分で開ききったシャツを直してくれている。サンジは気が抜けたのか、近くにあるその顔をじっと見てみる。
移動してきてすぐの先月の朝会で、校長に紹介されていたけれどよくよく見てみれば顔色が悪い以外はなかなかのいい男だと思う。背も高いし色気もある。女子がキャーキャー言っていたのを思い出すと、わかる気もする反面面白くないなとも思う。

サンジがボケっとしていると、保健医が顔を近づけチュッと軽く口をあわせてきた。
ほんの一瞬のことで、サンジはなにが起きたかわからないまま、ジッとその顔を見返せば保健医がスッと離れながらニヤリと笑う顔を見て、今自分に起きたことを理解する。

「て、てててめぇ!!い、いま、ききキス…」
「寝てる顔も好みだが、今みたいに生意気そうな面もたまらねぇな」
「ぎゃ!変態、この野郎!!」

サンジはベットに立ちあがり、叫びながら目の前の保険医を蹴りあげれば保健医はベット横のカーテンの間仕切りごとがたんと後ろへ倒れこんでしまう。

「いてぇな」などと言いながら立ち上がるその男、それでも何がおかしいのか口元をニヤリとゆるめたままサンジをジッと見つめてくる。サンジは顔をカッと赤くし、慌てて脱いであった上履きをはいて廊下へと飛び出して行った。
そのサンジの背中に「また来いよ」などとふざけたセリフを投げかければ「うるせー!!」と律儀にサンジの返事が聞こえてきた。



保健医であるトラファルガー・ローは、知り合いである校長に頼まれて産休の間だけと、この学校に赴任してきた。
すでにひと月たつけれど、キャーキャーうるさい興味の沸かないガキばかりで退屈していたのだ。

それが一変した。

頼まれた書類を渡すため職員室に行って戻ってきてみれば、眠り姫よろしく誰もいなかったはずの保健室のベットにいつの間にか男子生徒が一人眠っていた。
どうにも寝顔の美しさに惹かれ、思わず時間も忘れて魅入ってしまった。そして起きてからのあの生意気な感じ、恵まれた身体能力。ローには珍しく心動かされ興味を持ってしまった。
上履きに書いてあった「サンジ」という名前の生徒は今度いつ来るか、どう可愛がってやろうかという楽しみができたことがうれしくてたまらないにとでもいうように先ほどの顔を赤くするサンジを思い出して、一人でくっくと笑ってしまった。









おわりだよい
ありがとうございました!

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