シリーズ

□「ローとサンジ」 お風呂掃除編
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「あ、てめぇもまさかのぞきか?!」

意外だとでもいう顔の、サンジの視線の先にはローがいた。
ここは、バスルームの脱衣場でローはズボンははいているものの、上半身は裸だ。その黒髪からは滴が垂れている。

「あれ、てめぇがふろ入ってたってこと?」

サンジはナミがバスタイムだとおもい、せめてもその間気持ちよく過ごしてもらおうとバスルームの見張りをかって出たのだ、勝手に。ひとりで。そしてあわよくば、その諸肌をチラッとでもおがめたら、と下心満載で。

「…黒足屋、まさか俺を覗きにきたのか?」
「んなわけあるか、ぼけぇ!」
「俺はナミ屋が先に入れというからきただけだ」
「なんだぁ、ナミさんあとではいるのかぁ」

ぷうっと唇をとんがらせて「残念だ」とがっかりするサンジを気にするでもなくローはタオルで髪をわしゃわしゃと乱暴に拭いている。

「あー、てめぇでるとこ?じゃ、洗っちまうかな」
「なにを」
「風呂だよ」
「お前が洗うのか」
「ああ、たまにな。今からナミさんが入るなら気持ちよく入ってもらいてぇし。船じゃあんまりお湯かえるのタブーだろ?でもよ、そろそろ替えどきだ」

がちゃりとバスルームに入るサンジに続いて何故かローも入ってくる。サンジは不思議に思い「なんだよ」と聞けば、風呂を洗うとこをみたいという。サンジはズボンの裾をまくりあげた。

「なに、てめぇ。風呂洗いフェチ?」
「そんなフェチ、聞いたことねぇ」
「俺もねぇよ!ま、なんでもいいや。上着ろよ、風邪ひくぞ」
「俺は大丈夫だ」

冷たいシャワーを全体にかけ、がさがさのスポンジに洗剤をかけて泡立てるサンジ。
それで桶やら壁やら蓋やら、誰が使うのかオモチャやらを洗い上げていく。

「…お前は、なんで麦わらの船に?」
「ん?なんでだろうなぁ…成り行き?うそうそ。まあ、うちの船長のでかい可能性と未知のパワーに魅入られた、みたいな。早く言えば惚れたのかもな。あいつの人生に付き合いたくなったんだな」
「そうか」
「なに、ホームシックかよ?てめぇの仲間んとこに早く戻れたらいいな」
「俺の船は潜水艦だ」
「へぇ、そりゃ珍しいじゃねぇの?」
「乗りたいか?」
「ん?」
「お前なら大歓迎だ」

風呂椅子に座り、おもちゃを洗うサンジの手が止まった。
腕を組んで何をするでもなくただ本当にサンジが風呂を洗うのを見ているだけのローの顔を見上げてみるが、そこからは何も読み取れなかった。

「…どういう意味だ?」
「……」
「まさかの引き抜きってわけじゃねぇよな?ただ見学させてくれるってことか?」
「まさかの引き抜きだ」
「はは、てめぇの舌肥えちゃったって?」
「そうだ」
「悪いが俺の船長はルフィだけだ」
「…残念だ」

そういう割に口元が柔らかく穏やかに微笑むロー。
サンジは残り湯を桶にくみ、洗ったものを流していく。そして風呂の栓を抜きながら湯船に入り、そのまま中をスポンジで優しく擦りだした。






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