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□「ローとサンジ」 手のひらマッサージ編
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「あっ、いて…」

包丁を研いでいるときに左手の小指を切ってしまった。
ほんの少しだがこれがなかなか痛痒い。

うっすら血が滲んできて、サンジはそこをチロっとなめる。
普段から出血(おもに鼻血)が多いだけに少しの出血も気を付けろと船医であるチョッパーには再三注意をうけているのに。
そういえばそろそろ採血の時期かもしれない。
ケガをすることの多いクルーたちなだけにチョッパーは定期的にみんなから血液を抜いて、何かの時のために保管しておいてくれるのだ。サンジほど出血が多くて、しかも珍しい血液型だとそうするのが一番いいんだと、頼りになる船医どのの考えである。

傷をグッと押さえてみるとプクっと再び血がでてくる。
サンジは何か無いかと辺りを見回してみても絆創膏などはない。となりの医務室へ移動してみればチョッパーは留守でサンジはうーん、と悩んでから机においてあったガムテーブをビリっと少し破り、傷口にぺたりと貼りつけた。

「うし」

これで止血完了。磨いたばかりの大切な包丁に血液がつくことないだろうと鼻歌混じりに安心してキッチンへと戻った。サンジは先ほど磨いたばかりの包丁を洗い直し水切りへと移した。
タバコをとりだし一服していると視線を感じ、振り向いてみればモモの助を抱いた錦えもんがキッチンのソファに座っていた。

「おわっ!!てめぇ、いつきたんだよ!」
「今でござる。サンジ殿が医務室に入っていくときに丁度」
「別にびびってねぇからな!!って…そいつ寝てんのか?」

サンジは錦えもんに近づき、モモの助の顔をひょいと覗いてみれば子供らしく可愛らしい顔でスースー眠っているのがわかる。

「ルフィ殿と遊んでいて疲れたようでござる」
「ああ、あいつの体力は底なしだからガキにはたまんねぇだろうな。 おい、そのままだと疲れんだろう、貸せよ」

サンジが差し出した両手に一瞬いいのかな、という戸惑った顔をしながらも「かたじけない」といって錦えもんはサンジにモモの助をあずけた。
サンジは再びとなりの医務室へ移動し、そこにあるベッドへと横にしてやり布団をかけてやる。

「すまぬ」
「いいよ、ガキは寝て育つもんだ。寝て、うまいもん食って…それでいい」
「サンジ殿はすごいでござるな」
「なにがだよ」
「色々でござる」
「…まだ起きねえだろうから、アクアリウムにでも行って少し休んでろよ、みんないるだろうし。俺はキッチンにいるからモモが起きたら呼んでやるから」
「何から何までかたじけない」
「気にすんな。じゃあな」

サンジはキッチンに戻り、錦えもんはそのまま外へとでていった。

サンジはタバコを消して水に湿らせてからゴミ箱へと投げ捨て、水切りに置いてあるグラスをとり、布巾で磨きあげていく。水滴のついていたそれが見違えるようにキラキラと輝いていく。

「見事なもんだな」
「おわっ!!」

さっきも同じ台詞を口にしたなと思いながら、声のするほうを見てみればいつのまにかキッチンのソファにローが座っていた。

「いつから」
「お前がチョンマゲ屋と医務室へいったときからだが」
「…そうかよ、別にびびってないからっ」
「それよりそれはなんだ」
「どれ?」
「それだ」

ローがサンジを指差すがサンジはキョロキョロと「どこだ、なんだ、なんのことだ」と探している。
ローはハァーとバカにしたようなため息をついて、つかつかとサンジの近くに寄りサンジの左腕を掴んだ。
「わ、わ、てめぇ…ななな、なんだよ!」

カアっと顔を赤くさせサンジはローの腕を振りほどいた。

「これだ、この指」

ローが指したのはさっきガムテーブを貼った左手の小指だ サンジはホッとしたように、なんだ、と呟いた。

「切ったんだよ、あ、料理中じゃねぇぞ。料理に血を入れるようなことはしてねぇ。いつだって安心して食え」
「そんなことはどうでもいい、むしろ血の入った飯に興味が沸きそうだ」
「よくねぇよ!変態か!」
「それより、なんでこんな」
「ああ、チョッパーいなかったし、応急処置で貼ったんだよ」
「見せてみろ」
「お、ローせんせい診てくれちゃうわけだ?よし待ってろ、今見せてやるからな」







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