シリーズ

□「ローとサンジ」 微熱編
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ここいら辺の天候は変わりやすい。
昨日なんて、かんかんと晴れていたと思ったら急にヒョウが降り出し、ついでは雷が鳴り出す始末。
なんだここはと、ナミが進路を大振りにして目的地へと軌道を修正したはいいが、やはり読みにくい天気が続く。

「風が強いから、ルフィ、海に落ちないように中に入ってなさいよ」
「わかった!」

ルフィはわかったといいながら、まっすぐにライオンちゃんの頭へと向かう。どうもここが一番居心地がいいようだ。
ナミはあきらめたようにため息をついて「誰かあの船長、面倒見てよね」と女部屋へと引っ込んでしまう。
サンジはメロリンとしながら「あいあいさー!」と返事だけはとてもいいが、すぐにキッチンへと引っ込んでしまった。

この船のクルーは半分は能力者で海には入れない。
そして今、一緒に旅をしているローや錦えもん、モモの助、シーザーも能力者のためいそいそとサンジについてキッチンへと引っ込んでいく。船内ならばどこでもいいのだろうけれど、キッチンが一番待遇が良いためになんとなく集まってしまうのだから仕方ない。

「ほら」

サンジはみんなの前にドーナツとドリンクを用意してから煙草をくわえて鼻歌交じりにドアの外へと出て行ってしまう。
残された面々は特に会話もなくおとなしくおやつをほうばった。

「ほら、くそゴム」
「お!!ド―――――ナツじゃん!!」

ルフィは船首から鼻をクンクンさせて近づいてきたサンジを見上げておとなしく待っている。
サンジが船首に足をつき、差し出したドーナツをルフィが受け取った時に強い風が吹いた。サンジはよろけたものの体制を立て直したが、お盆の上のドーナッツが一つコロッと海へとおちそうになっしまった。ルフィは慌てて腕を伸ばしてそれをつかんだ。すると再び反対側から風が吹いて船体を大きく揺らすと、今度はルフィの頭に乗っていた帽子が風に飛ばされ海へと落ちていく。

「あ――――っ、帽子!!」

ルフィは慌てて腕を伸ばそうとするが風は強く吹き続けているため、ルフィ自身落ちたらたまらない。
サンジは慌てて「まて!!」とルフィを制してお盆をルフィに手渡し、脱いだジャケットを甲板向かって投げてからそのまま海へとダイブした。

ばしゃーんと聞きなれた嫌な音がしたため、ゾロが昼寝から起き上がり船首へと慌てて走りよってきた。

「ルフィ!!」
「ゾロ、サンジが海にとびこんだ!!」
「コックが?」

ゾロが海を覗きこんでみれば流されていく帽子を掴み、船へと泳いでくるサンジの姿があった。
風が強いため、船の動きも早く、なかなか追いついてこれないようで船の動きを軽減させるためにゾロは帆を畳みに走った。そして慌てて女部屋のナミへと大声を張り上げることも忘れない。

「ナミ!!コックが海に落ちてるぞ!!」

その声を聴いて、ナミとロビンが部屋から飛び出してくる。

「うそでしょ!!なんでサンジ君が」
「急いで引き上げないと」

船内にいたクルーたちも甲板に集まってくる。ウソップが慌ててロープを投げればそれにうまく手が届いたようでサンジがつかんだのがわかる。そのままロビンの手たちがサンジを運べば、最後にルフィが手を伸ばし一気に船へとサンジの体を引きもどしてくれた。

「うへーーーー、いっぱい海水飲んじまった」
「サンジ!!大丈夫か?」
「ああ、ほらよ船長。宝物だ」
「…サンジ、ありがとな!!でも無茶するなよ、俺にとってサンジだって大事な宝物には違いねぇ」
「あいあいさー」

ルフィはもぐもぐとドーナツを頬張ったままにサンジの冷えた体をギュッと抱きしめてくれた。サンジはへくしっとくしゃみをして、着替えてくるといって部屋へと引っ込んでいった。

ロッカーを開けてタオルを取り出し、とりあえず今身に着けているものすべてを脱いでから体をふき取った。シャワーに入るのは夜まで我慢だ。
サンジが新しいシャツに袖を通しているとチョッパーが慌てて部屋にきて「大丈夫か、サンジ?」と聞いてくれる。

「おう、風邪引いたことねぇから俺は不死身だ」
「だよな、サンジだもんな。へへへ」

チョッパーのかわいい笑顔で癒されるなぁとサンジは思いつつ、ずきずきと耳が痛むのを感じた。それでもそんなこと絶対に気のせいだと、濡れた服を抱えて脱衣所へ置きに行く。洗濯ももっと天気がいい時でないと気持ちよく乾いてはくれないのでもう少しの我慢だ。

サンジはそのままキッチンへと向かった。
みんなどこかへ移動したのか、ソファにはローが座りカウンターにはゾロがいるだけだった。




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