パイレーツ

□前略、恋をしました(ルフィ)
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キッチンを出ると風がきもちいい。
通る風が髪をくすぐって心を凪いでくれる。自分に矢印が向いてきている気がする。やっぱりここはびしっと男らしく告白をして決めたいとサンジは思う。

サンジの靴の音に反応して、ルフィが船頭から飛び降りてくる。

「サンジ!!」

そしてサンジの手に乗るお盆を見つけ「うまそー」と、目を輝かせてサンジの体にぐるぐると巻きついてみせた。
サンジはそんなルフィもかわいいと思い、やっぱり好きだといっそうドキドキしてしまう。

「…おら、くそゴム。これが飲みたけりゃ、俺から離れろってンだ。こぼしちまうだろうが」
「おう」

するっとルフィはサンジから離れて手渡されたオレンジスカッシュをぐびぐび飲み干していく。少しこぼれたしずくがルフィの顎を流れていく様をサンジは喉をごくりと鳴らして見守った。

ルフィが飲み終わったら。
これを、飲み終わったら。

「サンジ、んまかった!!ごちそうさまー!!」
「…あ、ああ」

ルフィからグラスを受け取りサンジは覚悟を決める。そして「ルフィ」といつものように名前を呼んではみたけれど、少しかすれてしまっていたかもしれない。それでもルフィはそんな雰囲気など気づいていないように「どうした?」などと呑気な様子のまま。

「ルフィ、あの…」
「なんだ?」
「いや、あの…俺、俺、お前が好きなんだ!!」
「ああ、俺だってサンジ大好きだ!」

きらきらした笑顔とほほ笑みでそんなことを言われて、サンジは悶えてしまいそうになる。そんな気持ちをぐっとこらえて改めてルフィに向き合うと、手にしたグラスの氷がカランと鳴った。

「ルフィ、俺は…お前が好きなんだ。俺はお前を抱きたいくらいに!!」
「…サンジ…お前」

ルフィは信じられないという目をサンジに向けた。サンジが思っていたよりルフィの反応が重くて、まるで空気までも重くなってきているようで耐えられなくなってくる。 サンジはどうしていいかわからずにのどが渇いてきたみたいに声が出ない。
そして、ルフィからの言葉が耳に届いた。

「サンジ、わりぃ」
「っ、」

そんなルフィのまじめな顔を見たことがなかった。サンジはぐっと唇をかんで、精いっぱいの笑顔をルフィに向けた。

「サンジ、あのな」
「いいんだルフィ、悪かった。あぁ、そうだお前も島に降りろよ、うまいハムがあるってロビンちゃん言ってたし、きっとお前も気にいるさ。あぁ、俺なら大丈夫…だから」
「ハム?!わかった!」

ルフィはひょいっと船から飛び降りて「戻ってくるからな~」とサンジに手を振り行ってしまった。サンジはガクリとその場に崩れ落ち、ぽろぽろと涙を流してしまう。
本当は無理だってどこかでわかってはいたけれど、あんなに好き好きといわれて毎日過ごせば少しは自分に気があるんじゃないかと思っても仕方ないとサンジは思う。

これからは潔くルフィの役に立つコックとして生きていこうとおもう、けれど、それでも好きな気持ちは消えることはない。

これからどうしようか、まさかクルー全員に言いふらしたりはしないだろうな。そんな子供みたいなことをルフィがするはずがないと思いながらもすっかりサンジは落ち込んでしまった。







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