パラレル

□友達の話(ウソップ語り)
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そんなときに、やっぱりゾロの「わりぃな、ウソップ」を別の場所で聞いたのだ。


それは放課後、下駄箱に向かう途中、男子トイレから何かうめき声のようなものが聞こえた気がした。
俺は驚き怖がりつつも、誰かが具合が悪くて助けを求めているかもしれないと、勇気を出してトイレに入ったのだ。
まさに勇敢なる高校生男子と自画自賛。

すると、トイレにうずくまりゲーゲーと吐いているゾロがいた。


「うおおおぃ、ゾロ!大丈夫か!!」


俺は慌ててゾロの背中をさすってやれば、少し振り向きながら「わりぃな、ウソップ」と苦しそうにつぶやいたのだ。


一通り吐き終わってすっきりしたのだろう、ゾロがばつが悪そうに立ち上がると洗面所で何度も何度もせっけんで手を洗いだしたのだ。


「おい、胴着きてるってことはまだ部活中だろ?こんなとこのトイレまで来てどうしたよ?もう帰ったほうがいいんじゃねーか?」
「…俺な」
「うん?」
「潔癖症なんだ」
「…は?」


潔癖症とっても、他人と同じものに触れることはある程度の免疫はあるようで、普段の生活や部活では支障はないようだ。

自分で気にしていたのだろう、隠してきたようで気付いてる人間は誰もいないだろうと。
それでも人と同じコップは使えないというのが、大きな悩みのようだ。

今も休憩だからと先輩に勧められ、ペットボトルを渡されたという。
尊敬する、大事な先輩に。

そこで遠慮すればよかったのだが、なんとなく大丈夫と思って口をつけたはいいが、途端に吐き気をもよおして先輩にごまかしながらも体育館から離れたここまでやっとの思いで来たという。


「大変だったな…」
「だせーだろ?」
「いや、かっこいいよ。弱み見せないなんてゾロらしい」


そんな俺に目を丸くして、それからニカっと笑った。







それからのゾロは、他人の飲みかけや、食べかけには絶対に手をつけなくなった。
そのことについて聞いてみたことがあったが「だってよ、口ん中、ごきぶりが100匹分のバイ菌があるっていうじゃねーかよ。気持ちわりーだろうが。女とヤるのは嫌いじゃねーけど、キスだけは勘弁だな」って。

こういう奴だったのに。
















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