dream long
□第7章
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壁外調査から帰り3日間の休暇。
ほとんどのものが傷を癒す時間としてる。
しかし、やっぱりこの人たちは違った。
「来い、家畜」
「だぁかぁらぁ、家畜じゃないってばぁ」
「口答えするな、雌豚」
「ま、待ったぁ!!!戻さないでぇ!!!ランクダウンしないでぇ!!!」
「黙れ、下げてほしくなけりゃあ黙って腕立て伏せ100回、腹筋100回、背筋100回、スクワット100回、外周25kmだ。」
「せっかくの休日なのにぃ・・・」
「ほう・・・口答えか、そうかそうか」
「ご、ごめんごめぇん!!!うそうそ!!!やるからぁ」
「・・・・伏せろ」
黙って従う名無しさんさんはまるで従順な忠犬だ。
しかも従って全部やって帰ってきちゃうんだからすごい。
確認だけど、男、じゃないよね・・・?
って聞きたくなるほどだ。
「おい、アルミン」
「ん?どうしたんだい、ジャン」
「お前も見たよな、名無しさんさんの戦い方」
「・・・うん」
僕たちが見る限りでは、めちゃくちゃだった。
立体起動装置の使い方も、飛び方も削ぎ方も。
僕たちが習ったのとは全くの別物だった。
「すごいよな、あれ」
「ほんとに、空中を舞ってたよね」
「ああ、舞姫って、納得できたな」
横に並んでる巨人の項を一気に切るなんてすごい。
しかも飛んでくる返り血を避けながら・・・
名無しさんさんもリヴァイ兵長と同じく血がかかるのは好きじゃないらしい。
「しかもガスほとんど吹かしてなかったしよ」
「そうだね・・・吹かしてないのになんであんなにスピードがつくんだろう・・・」
「俺もそこは謎だったな、とりあえずほとんど意味がわからなかった。」
確かに、ほとんどの動きが早すぎて見えなかた。
まさに理解不能だ。
「おーい、アルレルト、キルシュタイン」
「あ、ネス班長」
「お疲れ様です」
遠くから私服を着たネス班長が歩いてくる。
今日だけは休日なんだよーと言って頭をかく。
今日も白いバンダナは健在だ。
「どうしたんだ?こんなとこで、街には行ったのか?」
「はい、久しぶりに行けて良かったです」
「そうか、それは良かったな」
にぃっと笑うネス班長。
歳の割には若い笑顔だと思う。
「あ、あの」
「ん、どうした?キルシュタイン」
「名無しさんさんの、戦い方ってすごいですよね?」
「あー、お前らも見たのか!!すごいよなぁ。」
「なんで、あんな風に、できるんでしょうか」
ジャンは少し強ばった表情で聞いた。
目はうつむいている。
「はははっ、そんなんで暗い顔すんなって!!名無しさんさんに聞いてくればいいじゃねーか!!!」
ほらっと言って腹筋をしている名無しさんさんの方向に背中を押されるジャン。
「うわっ?!」
いきなり背中を押されて状況が理解できないジャンをよそに目の前の名無しさんさんとリヴァイ兵長が見つめる。
むしろ兵長に至っては睨んでいる。
「え、ちょ、ネス班長?!」
「どうせなら弟子にでもしてもらえ!!お前の立体起動の実力ならいけなくもない思うぞ!!」
また無責任なことを、そんなことを思うのは僕だけじゃないと思う。
リヴァイ兵長と名無しさんさんが対戦した時以来、
ジャンにとって名無しさんさんは憧れの人になってしまっているようだ。
ほら、顔が真っ赤になってる。
「どうしたんだぁい?君は確かぁ・・・ジャン・キル・・・なんだっけかぁ?」
「ジャン・キルシュタインだろ、同じ立場の人間の名前くらい覚えろ、糞女」
「おぉ、なんか新しいのがきたぁ!!」
「あ、あの!!!」
「どっちに用だ、」
「ぁ、名無しさんさんに・・・」
「私にぃ?珍しいなぁ、どうしたんだぁい?」
腹筋をやめて下から覗き込むようにしてジャンを見ている。
更に顔が赤くなるジャン。
「その、名無しさんさんの立体起動装置さばきとか、戦い方とか、見ててすごいなって思って、」
「うんうん」
「見習いたいなって思って、それで」
「うんうん」
途中チッという舌打ちが相槌で入ってくる。
きっと、というか確実に兵長だろう。
名無しさんさんは立ち上がってジャンの前に立つ。
「教えて、くれませんか・・・?」
ようやく顔を上げたジャンはあまりの近さに少し狼狽えてるけど頑張って耐えている。
「私の、戦い方を真似したいの?」
「は、はいっ!!」
「うぅん・・・そうだn「やめておけ」ちょっとリヴァイィ!!折角習いたいって言ってるんだからぁ」
「お前、昔同じこと言ってきた奴に教えて、そいつの骨を折らせちまったこと忘れてるわけじゃねぇだろうな?ああ?」
「あ・・・あははぁっそんなこともあったなぁ・・・」
ネス班長の体が軽く跳ねるのがわかった。
ああ、この人なんだ、その骨折った人。
「やめておけ、身のためだ。」
ジャンの夢は儚く散った。
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