dream long

□第5章
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「やぁ!!みんな!!!今夜は集まってくれてありがとう!!!」


「は、はぁ・・・」



急なハンジさんのハイテンションっぷりに引いているジャン。
俺にはこれが普通なのだが・・・。


「今日は巨人の生態についてじっくり話したい気分なんだけど、」



ガタっと立ち上がり少し悲しげに語るハンジさんに引いているベルトルトとライナー。


「名無しさん、いるだろ?」


「どうして、片目を隠すことになってしまったのか、ですか・・・?」


「アルミン、君は感が鋭いね」



ハンジさんは座り直すと机の上に手を置いてゆっくりと話し始める。


「彼女はその昔、女子人類最強として謳われた。そのことは知ってるよね?」


「はい、存じています。」


「その当時、それはもう綺麗で、髪の毛も長くて強くてさぁ」



昔を懐かしむかのようにゆっくりと穏やかに話す。
聞いたことがあった、踊るように可憐に巨人を切り倒す兵士がいた、と。


「ほら、舞姫≠チて聞いたことなかい?」


「舞姫・・・聞いたことがあります。確か踊るかのように空中を舞い、その技は神だと・・・」



ライナーが言う。
その顔は少し怯えたようだ。


「そうそう!!その舞姫は彼女さ。その相棒がリヴァイだったんだけどね」



ふと、目を伏せるハンジさん。


「ある壁外調査で、奇行種が蹴った家の下敷きになった。」



ゴクリと喉を鳴らす。


「でも本当は、名無しさんじゃない、他の兵士が下敷きになりそうだったんだ。しかも一般兵さ。」


「かばったってことですか?」



コニーが口を開く。
普段馬鹿なのにこんな時ばっかりはちゃんとしてしてる。


「そうなんだよ、普通こっちからしたら名無しさんの命の方が断然重いさ。」



それはそうだ、誰がどう考えても。
きっと助けらてた兵士もそう思ってるだろう。


「まぁその助けられた兵士は今は死んじゃったけど」


「それじゃっ、名無しさんさんが怪我した意味がないんじゃっ」



不安げに尋ねるクリスタ。


「ああ、私やリヴァイ、エルヴィンも同意見だったね。それでも彼女は、
少しの間でも活躍してくれたならその兵士は人類に貢献した
って言ったんだ、この人はやっぱり強いなって思ったよ。」


「そんな経験があってこそのあの明るさなんですかね、名無しさんさん」



そうサシャが言うと、ハンジさんはにっこり笑ってそれもあるかなと言った。


「でも一番の理由はリヴァイさ」


「へ、兵長ですか?」



俺がびっくりして聞き返すと面白そうに気になるかい?と聞いてきた。
それはもちろんと言わんばかりな表情で104期生は自然と体が前屈みになった。


「ははっ、みんなも知ってる通りリヴァイは名無しさん命だからねぇ、怪我した時もすごかったよぉ!!!
兵長になれって言われた時も自分が名無しさんの代わりなんか勤められるわけないって、
兵長になるのも一旦は拒んだのだけど上の命令だから拒否するわけにもいかないしね」



少し興奮したように話すハンジさん。
一体今の会話の中のどこに興奮するものがあったというのか。


「もう名無しさんが怪我したあとは面白いくらいにリヴァイの調子が不絶頂でさぁ!!!ほんとに面白かったn「おい」げっ」



全員の肩がビクッと跳ねた。
ハンジさんをこんな風に呼ぶ人はあの人しかいない。


「てめぇ、何話してやがる、このクソメガネ」



ゆっくり後ろを振り向くと最高に不機嫌なリヴァイ兵長の姿が。


「てめぇは新兵に名無しさんの素性ぺちゃくちゃ喋って楽しいか、ああ?」



ハンジさんの顔面を片手で掴みながら持ち上げる兵長。
その腕力恐るべし、だってハンジさんの顔面がメリメリと悲鳴をあげている。


「ああああああああああ!!!リヴァイ!!!痛いよ!!!」


「確かにあいつ自ら話さないが、わざわざお前が喋らんでもエルヴィンが話すだろうが」



それに、


そう言ったところで兵長の動きが止まる。


「あいつも来てる」



これは一体なんなのだろうか。
ハンジさんに恨みでもあるんだろうか。

ハンジさんの顔が青ざめていく。


「いいよぉ、リヴァイィ。私が話さないのがいけないんだからぁ」



いつもの口調で兵長を宥めながら入ってきた名無しさんさんの顔は少し悲しそうだった。

眉毛を八の字にに曲げやんわりとした微笑みを作っている。


「チッ、だからお前はお人好しなんだっ」



兵長は文句を言いながら出て行った。


「ごめんねぇ、ハンジィ、話しといてくれてありがとぉ」


「気にしないでよ、名無しさんはこういう話するの苦手だろ」


「まぁね。みんなもごめんねぇ、折角話してたのにぃ、リヴァイ追わないとあのままだと拗ねて話聞かなくなっちゃうんだよねぇ。
ってことでまた明日壁外調査の時にねぇ」



ひらひらと手を振りながら帰っていく名無しさんさん。
まだ仕事が残っていたのかその背中には自由の翼が羽ばたいていた。

一般兵だが兵長の仕事を半分受け持っているらしい。


「君たちには、そんな強い彼女を知っておいて欲しかった、
そしてそんな彼女のたくましい姿を今度の壁外調査で見てほしいんだ」



そしたら君たちの勇気にもなると思う。
にこっとしたハンジさんが言った。



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