dream long

□第8章
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「兵長、なんで今日は俺に届けるように言ったんだろうなー・・・」



俺は一人薄暗い廊下を歩きながらふと思った。
いつもなら兵長が名無しさんさんの部屋に直接資料を渡しに行くのに何故か今日は俺に任せた兵長。

喧嘩でもしたんだろうか。


「あー・・・何か緊張してきた」



今は夜だから巨人が襲ってくることもない。
だから今兵士はほとんど寝巻きだろう。
しかももうすぐ部屋に戻らなければいけない時間だ。


「早く渡して帰ろ」



ゆっくりと教えられた部屋に近づく。
早く帰ろうとはいっても、緊張が邪魔してそう簡単にはいかない。





名無しさんさんの部屋着とか、少し気になるかもしれない・・・。
いや、別に下心とかはなくて・・・
眼帯とかいつものガッチガチのじゃなくて、ゆるい感じのやつに変わってたりすんのかな・・・


そういえば、ジャンは少し前からミカサじゃなくて名無しさんさんのことを目で追うようになっていた。

あいつわかりやすいんだよな・・・



まぁそんな俺も名無しさんさんの戦い方とかに惚れたんだけど・・・


「着いちまった・・・」



いろんなことを考えながら歩いているうちについに名無しさんさんの部屋の前についてしまった。

今思ったが、兵長の部屋と近い。


「いつも通り、いつも通り・・・」



自分で自分を励ましながら部屋の扉をノックする。
コンコンッと二回ノックすると中からはーいと言う声が聞こえた。



扉が開いて顔を出した名無しさんさんはいつもと違った。


「リヴァイ遅かったn・・・」


「あ・・・名無しさんさ「ごめん!!!ちょっと待ってて!!」あ、あの!!」



名無しさんさんは慌てて部屋の奥に入っていった。
その名無しさんさんの顔にはいつもの眼帯がなくて、その右目は赤く染まっていた。


だから、眼帯つけてるのかなって瞬時に思った。
あの時エルヴィン団長が見せたくないって言ってたのは、きっとあのことだろう。


「あははぁ、ごめんねぇ、」



ごまかしすようにして笑って出てきた名無しさんは眼帯をつけていた。


「あ、あの、これ」



資料を出すと笑顔で受け取って少し目を通すとぱっと顔が上がる。


「見ちゃった、よね・・・?」


「え、あ、いや、あの」


「いいの、その、まぁ入って?」



いつもの口調は無くて少し申し訳なさそうに言った。


「あ、い、良いんですか?」


「もう少しで消灯時間だし、廊下を歩いてたら目立っちゃうし、ちょっと時間経ってからの方がいいでしょ?」



そう言う名無しさんさんの言葉に甘えて遠慮なく入らせてもらった。


部屋に入ると普通の兵士と変わらない作りで、綺麗に掃除されている。
さっきの様子から言っておそらく頻繁に兵長がこの部屋を訪れているのだろう。


「座って」



椅子を引いて座らせてくれた。
名無しさんさんは机を挟んで目の前に座る。

いつの間に用意してくれたのかホットミルクが目の前に用意されていた。


「あ、それ、飲んで?」


「すいません、押しかけたのは僕の方なのに」


「いいんだよ、これ、リヴァイに頼まれて来てくれたんでしょ?」


「は、はい」



先ほど渡した資料をひらひらとさせて微笑む名無しさんさん。


「いつもリヴァイが持ってくるから今日もリヴァイかと思って眼帯なしで出ちゃって・・・」



ごめんね、気を悪くしただろう
そう言って悲しそうな顔をして頭を下げる。


「そ、そんなことないです!!!謝らないでください」


「エレンが初めてだよ、他の兵士に右目見せたのは」


「それって、かばった時に、」


「そうそう、ハンジから話は聞いたでしょ?」



確かに聞いた。
降ってきた家のレンガの塊に下敷きになった時に地面に頭をぶつけた。
その時ちょうど足元に石があって、頭を打った時に右目にその石が直撃して損傷したと。


「はい、聞きました。」


「今は見えないわけじゃないんだよ、でもね、みんなには見せたくない」


「なぜ、見せたくないんですか?」


「だって気味悪いし、普通の人間じゃないみたいで、嫌なの」



ははっと笑ってホットミルクを飲む。


「俺は、綺麗だと思います、その瞳の色」



そう言うと一瞬びっくりした顔をしたが、すぐに微笑んだ。


「それ、言ってくれたのエレンが二人目だな」


「え、そ、そうなんですか?」


「うん、まぁもう一人は予想付いてると思うけど」



にこっと微笑んで眼帯を外す名無しさんさん。
眼帯の奥から覗いた紅蓮色の瞳は本当に綺麗で。

しばらく見とれているとにこっと笑って名無しさんさんはこういった。


「リヴァイとエルヴィン、ハンジの前でだけ眼帯を外すんだ」


「それは、事情を知ってるからですか?」


「うん、そうだね、発見してくれたのはリヴァイだし目が覚めて最初に状況を説明してくれたのはエルヴィンとハンジだからね」


「なら、なんで俺に?」


「ただ単に、見られちゃったからかな?」



くすくすと笑って楽しそうにしている名無しさんさんを見てつられれ笑う。



そこからしばらく色んな話をしてもらった。
主に兵長についてだけど・・・

話を聞いていくうちに兵長がどれだけ名無しさんさんを大事にしているのかがわかった。


「もう一人って」


「ん?」


「瞳の色が綺麗だって言ったもう一人って、」


「リヴァイさ」


「そう、ですよね」


「珍しく照れてたよぉ!!あれはレアリヴァイだったね」



一時間ほど話した後、名無しさんさんの部屋を出た。
知らない話ばかり聞けて、いい経験になった。




今夜は、よく眠れそうだ。




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