dream short

□気づかれないように
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「おいマルコ、どこ行くんだよ」


「ちょっと外で涼んでくるよ」


「そうか、教官に見つからないようにな」


「ありがとう、ジャン」



少し気分が悪い、お風呂上がりにそう思った。
別に誰かがウザかったとか、面倒だったとかではない。


どんどんと開拓地に戻っていく同期。
見てるだけで悲しくなる。

こんなことをジャンに言ったらバカじゃねーのって言われるに違いない。



「はぁ・・・」


一緒に頑張ってきた仲間が、良きライバルが今日も数人去っていく。
お前は頑張れよ、そんな言葉を残して。


プレッシャーだ、負担だ。



優等生だから残れるだとか、そんなのは関係ない。
ここの生活で関係していくのは精神力だ。

毎日怖い教官に怒られながらも上位にいるサシャやコニーはすごい。



「気持ちいいなぁ」



自分じゃない声が聞こえて振り返る。



「名無しさん」


「マルコも涼みに来たの?」


「うん、まあね」


「私も涼みに来たんだぁ、ここ涼しいよね」



ふわっと石鹸の香りが漂う。
彼女の髪の毛はまだ少し濡れていて、風にあたりながらガシガシと拭く。


綺麗な金色の髪が暴れる。



「そんなことしたら傷んじゃうよ、名無しさん」


彼女の手からタオルを奪い取って後ろから拭いてあげる。



「あ、ありがとう」



だんだん小さくなっていく彼女の声。
きっと恥ずかしいんだろうな。



「女の子だし、折角綺麗な色なんだから痛まないようにしてあげて?」


「なんかマルコの方が女子力ある気がする」


「そうかな?」


「そうだよぉ・・・だってこの間怪我した時も医務室連れて行ってくれて、
しかも手当もしてもらったし・・・」



後ろから見える彼女の耳は心なしか少し赤い。



「女の子が痛そうな怪我してるのに、放っておけないよ」





好きな女の子だし、ね。

心の中でそうつぶやいて拭き続けていると、彼女がくるっとこっちを向いて僕を睨みつけた。



「女の子になら、誰にでもするの?」


「・・・・・・・・・え?」


「その子に気がなくっても、女の子にはそういうことするの・・・?」


「・・・・・・・・・うーん・・・」



それはどうかな。
そう言って、にっこり微笑みながら僕の指は彼女の髪の毛から頬へと移動させる。


真っ赤になった彼女はやっぱり可愛い。



「こんなことするのは君だけかもしれないな」


「、なっ」



まだ少し濡れている髪の毛を君の耳のかけて顔を近づける。

目をカッと開いて僕の目を見つめてくる。



「な、何をっ」


「好きだよ、名無しさん」



唇同士が触れるか触れないかくらいで止める。

返事をしてからじゃないとできないよね。
そう言って微笑むと彼女もにかっと笑って






「好きだよ、マルコ」



ちゅっと触れるだけのキスを落として顔を離す。
僕と君の身長差は約15cm



僕は屈んで、君は背伸びをする。



「マルコ、知ってる?」


「ん?」


「恋人の理想の身長差って、15cmなんだって」


「へぇ、知らなかったな」


「私たち、ぴったりだと思わない?」



そうだね、二人微笑み合って手を繋ぐ。
今日は綺麗な星空だ、明日も晴れかな。




「おい!!!お前たち!!!何をしてる!!!」



キース教官の声にびっくりして声のした方向に振り向くと、
首根っこを掴まれているサシャとコニーがいた。



「あの二人に、見られちゃってたかな?」


「そうかもね、戻ろうか、コニーたちみたいになりたくないし」


「そうだねっ、行こ」



残念ながら手は離れちゃったけど、心はあったかいままだった。




気づかれないように、帰ろうか。






(キース教官!!!あっちにも訓練兵がいました!!)
(どこだ!!!)
(今だ!!!サシャ!!!逃げるぞ!!!)
(これ逃げたって捕まるフラグじゃないですかぁ!!)




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