dream short

□※図書館緊急警報
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「隣、いいかな」


「あ、うん」



この時間の図書館は誰もいない。
だから心おきなく勉強ができる、無人の図書館は私にとって心地のいいものだった。

もちろん無人なのだから他の席はいくらでも空いてる。
なのにわざわざ私の隣に座る彼は同じ学校で同じ委員会の男の子。
背がものすごくおっきいから覚えてた。

名前は確か・・・


「ベルトルトだよ、ベルトルト・フーバー」



あ、そうそう、ベルトルト君。
って


「え?」


「名前なんだっけ、って言いたげな顔してたから」


「え、うそ、ごめん」


「いいんだ、慣れっこだし」


「そ、そう」



そう言って教科書とノートを鞄から取り出した。
机の上には眼鏡ケースと筆箱が既に置いておる。


「目、悪いの?」



彼に問うと少し困ったような顔をしながら頷いた。
彼が学校でかけてるところを見たことがなかった私にはすごく新鮮だった。


「授業中はかけないと黒板が見えないんだ」



背がおっきくて前の方の席にはしてもらえないから。
なんとなく納得できた。

確かに自分より背が大きい人が目の前に座っていたら黒板なんか見えっこない。
無論、彼よりも背の大きい人はあの学校にはいない。


「それは大変だね」



私は今日宿題として出されたプリントに目を移しながら言った。
彼はうん、そうだねと答えながらノートを開いた。


ここからしばらくは二人共無言で勉強に取り組んだ。
しかし、


「・・・・・・・・・」



しまった、詰んでしまった。
その問題は数学で私は数学が苦手だ。

だって、これ絶対将来使わないし・・・
私の止まった手元に気づいたのかベルトルト君の手元も止まった。


「どうしたの?」


「ちょっと、分かんなくなっちゃって」


「あ、数学だね、僕数学は得意なんだ」



どの問題だい?と聞かれていや大丈夫です自分で頑張ります、と言いたかったが、
このまま詰んでしまっているのも時間の無駄だと思ったのでおとなしく教えてもらった。


「ここをXとして考えてみて?そうしたら見えてくるはずだよ」


「・・・・・・・・・あ、」


「わかったかい?」



こくっと頷くとにこっと笑ってそれはよかった、と言った。

こんなところでミスるとは・・・
期末、大丈夫かな・・・


一旦シャーペンを置いて伸びをする。


「あー・・・」


「少し休憩しようか」


「私に合わせなくてもいいよ」


「僕が合わせたいんだ」



彼は何を考えてるんだろう。

前々から不思議な雰囲気だなとは思ってた。
あんなに背が高くて男前なのに消極的で。


「名無しさんちゃん」


「・・・・なんで私の名前知ってるの?」


「ライナーから聞いたんだ」



ライナー・・・あ、きっとライナー・ブラウン君のことだろう、彼とは同じクラスだ。
そういえば、彼はベルトルト君と仲が良かった。


「なんで聞いたの?」


「前にライナーと話してる時に気になったんだ、すごく美人だって校内中で噂だったし、」



は、何その噂、初耳。


「初耳、って顔してるね」


「へ、」



読心術でも持っているのだろうか。
びっくりして顔を彼の方に向けると思った以上に近くて固まる。


「・・・ちょっ・・」


「君に、興味があるんだ」


「どういうっ」



急に迫られて避けるに避けられなかった。
机に押し倒される形になった。


「ちょっとッ・・・ベルトルト君っ」


「ずっと、こうしたいと、思ってた」



すっと私の髪の毛に彼の手のひらが触れる。
そっと頭を撫でる彼に抵抗ができないのはきっと彼の綺麗な顔に魅せられてるから。

眼鏡の奥にある瞳はまっすぐ私の瞳に向かって視線が注がれている。
やがて彼の手は私の頬に触れて、触れたところから熱くなっていくのがわかる。


彼の顔が近づいてきて、首筋を舐める。


「ひゃっ」


「可愛い、」



そう耳元で囁くベルトルト君は官能的で、下の方が疼くのがわかる。
この時、自分が淫乱であるということを初めて知った。

ベルトルト君は耳朶を甘噛みし、音をたてて舐める。


「ひゃっ、あん、はぁっ」


「今日は誰も来ないよ、さっき閉鎖中って看板にしといたんだ、だからさ、







いっぱい名無しさんちゃんの可愛い声、聞かせて?」



私は既に、彼にはまってしまってるみたいだ。
甘い時の中で、二人の吐息が交じり合う。




※図書館緊急警報、現在この図書館は開放していません。



(ベルトルト君)
(ん?)
(眼鏡姿、素敵だよ)
(ありがとう、名無しさんちゃん)
(ん?)
(愛してる)
(ふふっ、どうも)


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