dream short

□※舐めてたよ
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「名無しさん、放課後、教室にいてくれないかい?」


「いいけど、なんで」


「話したいことがあるんだ」


「ふーん、そ、」



話しかけてきたアルミンはあいも変わらず嬉しそうに微笑んでいる。

そんな彼に話しかけられて他の女子に睨まれる私。
いや、私のせいじゃなくね?

私だって出来ればクラスの誰とも話したくないし、早く家に帰りたい。


それでも恐れずに私に話しかけてくるアルミンは本当にお節介だ。
きっと彼は私に友達がいなくてかわいそうだからと話しかけてきているのだろう。


私は所謂嫌われ者だ。
それは願ってもないことだった。

だって、あんなお遊びな関係なんか後々邪魔になるだけだ。
結局は、捨てられる。


「気をつけー、礼」


「さよーならー」



クラスに声が響く、これも嫌いだ。
私はそのまま教室を出て廊下で掃除が終わるのを待つ。

いつもならこのまま隣のクラスのアニのところに行って一緒に帰っているところだった。

あぁ、早く帰りたい。
アルミンの面倒事に付き合わされるのはごめんだ。


アニにこのことを言うと「わかった」とだけ言って先に帰っていった。
今日はアニに話したいことが結構あったなのにな、アルミンのせいだ。



掃除が終わって誰もいない教室に入った。
無人の教室はすごく心地のいいものだ。


私はここで誰にも見られずに寝るのが好きだった。
アルミンが話かけてこなかったら、の話だが。



「名無しさん、」


「話ってなに、早く帰りたいからさっさとして」



扉を開けて入ってきたアルミンはいつもと顔が違う。
きっちりと扉を閉めて私の目の前に来る。

近い、顔が。


「アルミン、近い、顔」


「わざとだよ」


「は」


「僕は君と仲良くなりたい」


「そ、いいじゃん、こんぐらい私と話せれば」


「他の人は君を誤解してる」


「なんにも誤解なんかしてない、私は他の人が見てる通り冷たくて性格の悪い女」


「違う、君は優しい」


「は、何言ってんの」



さすがのアルミンにも少しばかりの恐怖を覚える。
一歩ずつ迫ってくるので一歩ずつ下がる。

背中に壁が当たる。


「逃げないでよ、僕は何もしなよ」


「嘘、何かする気でしょ」


「君には、嘘は通じないね」


「なんなの、早くしてよ、何の用なのよ」



バンッと顔の横に手がつかれた。
びっくりして目を見開くとそこには黒笑のアルミン。


「君は、僕のこと嫌いかい?」


「ええ」


「嘘は良くないよ、名無しさん。正直に言わなきゃ」


「自意識過剰」


「君は、本当に可愛いな、そうやって照れ隠しするとことか」



ぐっと顔の位置が近くなる。

鼻と鼻がくっつく。
頭の後ろにアルミンの手が回ってふと唇が触れる。


「なっ」


「ほら、こんなに真っ赤になって」



ふふっと笑って私の頭を撫でる。
私の体は硬直してなぜが動けなかった。

理由はわからない。


「あんた、どういうつもり」


「僕は名無しさんこと、好きだよ」


「ふざけないで」


「ふざけてなんかない、好きだよ、君のそういうところ」



ぐっと顎を掴まれて顔を正面に向かされる。
そして唇を指でゆっくり撫でると今度は深く口づけをする。


「ん・・・はぁ・・・んッ・・・ぁ・・・ルミ・・・ンッ」


「ん・・・ふふっ・・・可愛い・・・」



ゆっくりと唇を離すと、どちらのかわからない銀色の糸が二人を繋いだ。

荒い息の中、アルミンが言った言葉は一生忘れないだろう。








「殺しちゃいたいくらい、可愛いな、名無しさんは」





※舐めてたよ、あんたのこと




(まさかあんたがそんなんだとは)
(アニは知ってたみたいだよ?)
(・・・・あの野郎)
(僕も健全だから)
(健全どうこうの問題じゃないっての)


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