dream short

□こんな季節
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「寒いね」


「そう、だね」



二人の間に空いた微妙な距離。
その距離はなんとももどかしく、二人を気まずくした。



ベルトルトは剣道部、名無しさんは剣道部のマネージャーだ。
たまたま残る用があった名無しさんは部室に残って作業をしていた。


するとまだ残っていたベルトルトが部室にいたらしく、作業を手伝ってくれた。
外は暗く流石にこの暗さを女の子一人で帰らせたくないし、帰り道も一緒だから一緒に帰ろうと言われ、今の状況に至る。


「もう11月だもん」


「気づけばって、感じだね」



下を見ながらとぼとぼと歩く二人は他の人から見れば喧嘩をして仲直りしようとしてるカップルだ。


「あの、名無しさん」


「ん?」



急に立ち止まったベルトルト。
呼び止められて立ち止まると押していた自転車が少しうるさくブレーキ音を鳴らした。

振り返ると不意に腕を引っ張られて抱きしめられる。
押していた名無しさんの自転車は派手な音をたてて倒れた。


「きゃっ」



びっくりして動けないでいると耳元で囁かれる。


「僕、名無しさんがいてすごく助かってる」


「へ・・・?」



突然のことにわけがわからない。
どうしたらいいかわからず名無しさんは取りあえずベルトルトの胸を押し返してみる、
が、常日頃から部活で鍛えられた筋肉と体格差でビクともしない。

抵抗しているのが分かったのかベルトルトは抱き締めた腕を名無しさんの肩に置いて固定した。


「名無しさん」


「ベ、ベル」



少し怯えた様子の名無しさんに眉毛を垂らすベルトルト。
名無しさんが手を離して倒れた自転車はタイヤが独りでにカタカタと音を立てて回っている。


「僕、ずっと君が好きだった」


「そ、それって・・・」


「君が試合後に出してくれる水は、最高のタイミングだよ」



照れたように言うベルトルトはいつもよりも更に真剣な表情だった。
なんだか、部活特有の告白の言葉だな、と密かに名無しさんは思った。


「ありがと、とでも言うべき?」


「そ、そう、かな・・・」






こんな季節、なのに何故か顔が暑い。



(あ、じ、自転車)
(あ、ご、ごめん)
((あ、ご、ごめん))
(手、当たっちゃって)
(き、気にしないでっ)


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