dream short
□言い訳
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「ただいま」
がちゃっと玄関が開く音がして気分が高まる。
彼の声と共に足音が近づいてきて更に嬉しくなる私の心は彼でいっぱいのようだ。
リビングに繋がる扉を開いて彼の顔がお出まし。
その顔は相変わらずの仏頂面だが、いつもの優しい顔だ。
「お帰りなさい、ご飯今作ってるから着替えてきて」
「ああ、今日はハンバーグか」
「よくお分かりね」
「手に肉持ってんじゃねぇか、」
「あら、ホントっ」
ふふっと笑うとリヴァイも呆れたように微笑んだ。
そのまま寝室に消えていったリヴァイの分のハンバーグの形を整える。
ここは意地悪をしてハートの形にでもしておこうか。
「怒られちゃうわね」
独りでリヴァイが怒っている姿を想像して頬を釣り上げる。
きっと「なんだ、急にきもちわりぃ」とか言うのだろう。
我ながらなかなかの推理をしていた直後にリヴァイが帰ってくる。
その姿は部屋着に包まれ、ラフなスタイルだ。
普段はスーツに身を通しているため身長が小さくても少し大きく見えるものだが、部屋着ともなると余計小さく見える。
そんなリヴァイは私の方を一瞬だけ見てその視線をテレビに移したままソファに豪快に腰を下ろした。
テレビをつけてしばらく見ていたが、
面白い番組がやっていなかったのかすぐにテレビを消して立ち上がり、キッチンに入ってきた。
「もうちょっとで焼きあがるわ」
「そうか」
「チーズはいる?」
「どっちでもいい」
「じゃあ乗せるわね」
「ああ」
フライパンの蓋を開けて溶けるチーズを上に乗せまた蓋をした。
因みに私はしつこいチーズは好きではないので乗せない。
リヴァイとはコレといった合う趣味もなければ食べ物もない。
なぜ結婚したのかは、きっと人間性だろう。
火を止めてお皿によそい、食卓へ持っていこうとしたらリヴァイに先に持って行かれた。
「お前は酒を運べ」
「はいはい」
相変わらずの亭主関白だが彼らしくて素敵だ。
二人で席に座ってビールを開けグラスに注ぎ乾杯をする。
「今日もお疲れ様」
「お前もな」
「私は何もしてないよ」
「家事してんだろ」
「ああ、そういうことね」
自分では疲れているつもりはないんだけどな、
というとそれは能天気で何よりだと僻(ひが)まれた。
それからも食べながら色々話した。
今日は部下がどうだとか、あいつはやはり躾がなってないだとか殆どは文句だったが。
呑みながら食べるとあっという間になくなったハンバーグ。
それと同時にビールも底を尽きてごちそうさまになる。
「御馳走様でした」
リヴァイは無言で両手を合わせて小さくこう呟いた。
「うまかった」
いつもは言ってくれない一言。
へ?と聞き返すとなんでもねぇと言って立ち上がった、恥ずかしかったのだろう。
「風呂入ってくる」
「あ、待って、お湯沸かさないと」
「そんぐらい俺がやる、お前は食器洗って休んでろ」
お風呂場に走ろうと思ったら肩を手で軽く押し返された。
今日のリヴァイは普段より気まぐれだ。
「わかったわ」
絶対に何か隠している。
浮気か?不倫か?あ、どっちも一緒か。
そんな考えを巡らせながら食器を洗い終えソファに座って見たくもないテレビを眺める。
「おい」
顔の目の前で急に手を叩かれ我に返る。
目の前にはまだ少し濡れている髪の毛を垂らしながら眉間に皺を寄せ不機嫌そうに私を見ているリヴァイがいた。
「何回も呼んでんだ、返事くらいしろ、馬鹿名無しさん」
コツンと軽く拳骨をくらう。
ごめんと一言謝ると謝る意味がわからねぇと言いながら隣に座った。
「どうかしたの?」
彼に聞くとはぁ?とでも言いたげな顔で見られた。
え、何。
色んな考えを巡らせるが、今日はリヴァイの様子がおかしかったことくらいしか・・・
「お前、今日」
「へっ?」
「誕生日だろ」
「あ、」
そうだった。
自分で気づかなかったって、相当だと思う。
リヴァイが覚えていたことにすごく感心しているとリヴァイの腕が首に回った。
「な、何?」
「いいから動くな」
逆らうと怖いので取りあえず一時停止しておく。
やがてリヴァイの腕が離れて胸元に違和感が生じた。
気になって目を向けるとリングの通ったネックレスがつけられていた。
「これって、」
「誕生日プレゼントってやつだ」
ん、と言って自分の胸元から引きずり出したネックレスには私のネックレスに付いているリングのペアリングがついていた。
そんなにチェーン長くなくてもいいでしょと心の中でツッコミを入れながらも嬉しく思った。
「お揃いってわけね」
「俺が頼んだんじゃない、店がその方がいいと言ったからだ」
「ふふっ、はいはい」
それ、言い訳になってないよ
(そういえば最近ご無沙汰だな)
(そうね)
(早く風呂入って来い)
(これつけたまま入っても平気かしら)
(錆びねぇやつだと言ってた、平気だろう)
(じゃあ毎日つけようっと、リヴァイもね?)
(ああ、)
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