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□淡く柔く
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萩「あっちぃ…」

薄手のものを選んだシャツでも蒸し暑くて袖をくるりと2回折り返した

夏は恋の季節なんて言い出したのは誰なんだろう
風に揺れたカーテンをちらっと見たら昼間見た君を思い出した


窓からの風が君の黒髪をなびかせる
ノートを取る綺麗な横顔を少しだけ盗み見たら、長い睫毛が見えたからドキッとした


『萩谷くん、レポートって来週?再来週?』

萩「えーと、再来週かな」

萩谷くん。隣にいるのに小声で名前を呼んだのは先生からの注意を避けるため。
ないしょ話をするみたいでなんだか懐かしくて妙に恥ずかしい

風鈴がちりんとなるような声で俺の名前が呼ばれたのが嬉しくて俺も小声で言葉を返した


大人びた雰囲気にクラッときた、なんて言ったらなんだか女の子みたい?

確かなものなんて何もない。
そわそわしちゃうこの感じを、恋してるなんて呼んで良いのかだってよくわからない

それでも君だって思ったんだ、ああこの人だって思ったんだ

俺たちはきっと出逢うべくして出逢った二人。
初夏が暑さと連れてきた恋心
ちっぽけな俺の、君への小さな恋心
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