Book **
□BABY baby
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「ただいま」
仕事が終わって寄り道もせずにすぐ家に帰るのは、大切な人が俺を待っていてくれるからで
『おかえり』
夕飯のにおいと君の笑顔。俺の家で待っているのは素敵なものばかりで、だからきっと俺は良い家庭を持ててる。これだけは間違いないことなんだと自信を持って言えること
《早く終わったから今から帰る。
体調がよければ買い物でも行く?》
仕事が終わってすぐに送ったメッセージは、1時間をすぎても既読のマークはついていなかった
「ただいま」返ってこない返事に不安になりながらリビングへ向かえばソファーで眠りにつく君
「良かった…」
体が体だ。疲れが溜まっているんだろう。
せっかく気持ち良さそうに眠っている君を起こすのに少し躊躇しつつそっと肩を揺さぶり名前を呼ぶ
『あ、翔太…おかえりなさい』
寝ちゃってて、ごめんねなんて寝起きのとろんとした目で言う君にたまらなく愛しさを感じつつ、守りたいとまた一層強く思った
「疲れ、溜まっちゃってたんだろ。体冷やすなよ?」
『大丈夫、気を付けてるから』
少しずつ大きくなってきたお腹には薄手のブランケット
愛しそうに優しい視線を向けてそっと手を当てる。
奥さんになった姿なんて想像出来なかった。お母さんになった姿なんてもっと考えられなかった
『翔太がパパだよ?私がママ。信じられる?』
仕事から帰った俺をソファーの隣に座らせて、エコー写真に写った小さな小さな命を見せてくれた。
嬉しくて幸せで思わず泣き出した俺を、子供をあやすように優しく何度も抱き締めて背中をさすってくれた
「早く、生まれてこいよ」
『まだまだ早いよ』
「早くお前に会いたいんだよ」
『パパはせっかちなんだよ、あなたが大好きで仕方ないの』
「パパが大好きなのはママもだけどな」
恥ずかしそうに笑った君にキスを一つ
やっぱりゆっくりでいいよ、急がず大きくなって出ておいで
それまではお前のママ、パパだけに独り占めさせてて