長編

□隣の、きみ
3ページ/18ページ



「よいしょ…っと」



なんの迷いもなく、自転車に跨がる泉。



『…ちょっと』


「ん?」


『乗るの?』


「当たり前だろ」


『……私は?』



はぁ、とため息をつかれる。


で、そのあとに。


「バーカ」

の一言。







『何よ。なんで私がバカ扱いされないといけないわけ?』








軽く睨み付けるようにして言うと、泉は後ろの荷台を指差した。



『…は?』






「後ろ。乗れよ」



『………は?』











「だから、後ろに乗ってけって」




『え…あ、あぁ…そういう…』








おとなしく従う。


泉にこんな近づけるなんて、思ってもみなかった。



ドキドキする心臓を抑え、荷台に跨がる。



「……何やってんだよ」


また、ため息。



『なにが。乗ったけど?』




「お前はそんなに落とされたいのか?」



『え…』




「ちゃんと捕まってろ。」



『あ…うん』











腕を回して、抱き着いた。



…なんか、照れる。




「よし、離したら落とすからな!」







『落とされんの!?』








そう言った、きみの耳。



真っ赤だよ?



なんだか嬉しくなって、きみの背中にくっついた。







夏だから胸があついのかな?




(顔も熱い…)


(夏だからなー)


【聞こえてた!?】




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ