水谷文貴
□それが言えたら楽なのに
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「水谷ー、ちょっと手伝ってくんねぇ?」
「おー、いいよー」
『(…やっぱ、カッコイイな…)』
じっと、彼の姿を見つめる。
私には、度胸なんてものはないから、告白なんてできない。
彼に好きな人がいるのかすら聞けない。
目を合わせるだけで、なにも話せなくなる。
「アンタさ、まだ告ってないわけ?」
『…う、ん』
「はぁ…、砕けるつもりで、当たってみなって」
『…砕けたくないもん』
「もー」
分かってる。
なんで呆れるのかくらい。
だから私は、ダメなんだ…いつも。
「水谷!助かったわ!サンキューな!」
「うん、あ、こんどケーキ奢ってよね!」
「安いやつならな!」
「っえー!あんなに動いたのにー!」
『…カッコイイ…』
ポツリと呟いた声が、聞こえたのか聞こえなかったのか…
水谷君がこっちを向いて、優しく微笑んだ。
『はぅっ…!』
「あーあ、ノックダウンか」
それが言えたら楽なのに
(ね、好き)
(…いや、私に言われてもね)
(…ぅー…)
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