好きと言えたら

□出会い‥
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春休みも明け気の抜けた生徒達は皆ようやく学校生活でのペースを取り戻し始めた5月の半ば‥

心地良い春の陽気が過ぎ去り不安定な天候の中連日降り続いた雨の為か体育館はジメジメと湿っていた‥

この日は週に一度の全体朝礼で生徒達は皆ぞろぞろと体育館へ集まり始めていた‥

そんな中朝から一段と気だるそうに話す黒髪が似合う一人の中学生‥

当時中学生二年生の高尾だ。

高尾「うわぁ〜!朝から朝礼とかマジかよ?超〜だりぃ」

矢田「確かにうちの校長すげぇ話ながいもんなー?おまけに毎回天気の話しかしないし!」

高尾「ギャハハ!!それ言えてる!言えてる!」


高尾と親し気に話すのは高尾と同じ1組の矢田博之‥

高尾以上にひょうきん者でクラスのムードメーカー的存在‥
茶色い髪を伸ばした今時のオシャレなヘアースタイルでルックも人並み以上なのだが残念な事に口を開いてしまうと何ともおバカなのが玉にきず‥なので女子からはまるでモテてい無い‥









校長「えー‥近頃は大分暑くなりましたが〜梅雨が近付くにつれ雨も大分増え〜暑いのか〜寒いのか〜よく分からなくなり〜夏と言うのは〜」





シーーーン




相変わらず何を言いたいのか分からない校長先生の長い演説が終わり担当の先生の進行がはじまる



「えー続いて授賞式に入ります‥先日行われた中学ピアノコンクールにて見事県内三位を飾りました二年二春野ウララさん前へ」



「はい‥」


名前を呼ばれた後に何処か幼く女の子らしい控えめな声が体育館に響いた‥



「スタスタ‥」


ただ壇上だけを見て綺麗な姿勢で真っ直ぐと歩く彼女の姿は思ったよりも小柄でハッキリとした目鼻立ちに長いまつ毛が印象的だった‥



チラッ‥‥



そんな彼女の姿を高尾は並んだ生徒達の隙間から横目で覗いた



高尾(あんな奴うちの学年にいたっけ‥?二組って事は隣のクラスか‥


同じ二年なのに始めて見る彼女の顔に疑問をもつと同時に周りにいた男子達がそれぞれヒソヒソと小声で話し始めた‥


ザワザワ‥

「あの子が例の‥」

「可愛いよな‥お人形さんみてぇ‥」

「あれで本当、彼氏いねぇの?」

「は?バッカ!お前あの噂しらねぇーの?!」

「噂‥?なんだよそれ?」

「それはな‥なんて言ったって春野はっ‥」




「コラ!!お前ら!!私語を慎め!!」




彼氏らの話に高尾も無意識に耳を傾けていたが先生の注意により話は中断された‥
話の続きが気になりつつも賞状を受け取り壇上を降りる彼女の姿を再び確認する




高尾(確かになんか非の打ち所がねぇって感じだな‥けどそれにしちゃー随分注目されてんな‥
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