どうか、

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ナナバさんと話すようになってからまた少しの時が流れた。人見知りな私ではあるが一度慣れてしまえば何て事はない、今ではナナバさんへの愛を面と出して接するまでとなった。見かければ互いに話し掛けるし、都合が合えば食事も共にする。それぞれの交友もあるので二人きりという事はまだ少ないが、それでも大好きなナナバさんと一緒に居られる時間はとても幸せなのです。


「ゲルガー、相談なんだけど」


今日もたまたまナナバさんとゲルガーさんが昼食をとっている所に出くわし昼を一緒させてもらった。食事を平らげのんびりとしていた時に、ナナバさんがふと零したのがこの台詞だった。


「あ?ナナバが俺に相談なんて珍しいな。ふん、聞いてやろうじゃねぇか。何だ、恋でもしたか?」


性格上、立ち位置がナナバさん>ゲルガーさんとなりがちな事に常々不服だったゲルガーさんは、珍しくナナバさんに頼られた事が嬉しい様だった。それにしても、悩み相談=恋が真っ先にイメージされる何て相変わらずゲルガーさんの脳内回路は直列ですね。


「ははは、いや恋の悩みではないんだけどね」

「何だよ違ぇのか」

「例え恋の悩みでもゲルガーさんには相談しませんよ」

「何だと名無しさんこのやろう!」


私の中で親戚の叔父ちゃん認定された(番外編参照)ゲルガーさんは他に知り合った先輩方の中でも特に親しくさせてもらっている。この軽口もその賜物だ。まぁナナバさんを追いかけていると必然的に相方ポジションのゲルガーさんにも遭遇し、仲良く成らざるを得なかったというだけの事なのだが。


「こらこら、喧嘩しないの二人とも」

「貶し愛ですよナナバさん」

「ったく…。んで、その相談とやらは何なんだよ」

「あぁ…、それがさ」


一旦言葉を区切ったナナバさんがチラリと私に目を向ける。な、何だ。じっと私を凝視するナナバさんに居たたまれなくなった私の視線が次第に泳ぎ始める。いくらナナバさん大好きな私でもそんなに目を合わせ続ける何て無理です!ナナバさんが眩し過ぎて!


「ふふっ。これなんだよね」

「はあ?」

「これ?」

「最近名無しさん可愛くて仕方ないんだよ」

「ゲッホ!ゴホゴホゲホッ…」

「ナナバさん頭でも打ちましたか。それとも何か変な物でも食べましたか。主に黄色い甘い果物とか」

「打ってないし食べてないよ、名無しさん」

「大変ですよゲルガーさん何時までも咽せてる場合じゃありません。ナナバさんがご乱心です」

えーせーへー!えーせーへー!調査兵団の良心ナナバさんが一大事ですー!


「っケホ、おいナナバそれは本気か?」

「私は滅多に冗談なんて言わないよ」

「冗談にしか聞こえねぇから聞いてるんだ」

「それ私に失礼ですゲルガーさん」


しかし悲しいがこれは私も同意だ。本当にナナバさんは如何してしまったのだろう。ナナバさんを悩ませるなんて私も罪なゲフンゲフン!…自分で言って罪悪感で死ねそうだ。


「別に変な意味じゃないよ。名無しさんは随分私に懐いてくれただろう?何だか前にあの子が言ってた事が理解できるようになってきてね」

「と、言いますと?」

「猫か何かに懐かれた気分なんだ」

「んだよ、そう言うことか…」


はぁ、と大きな溜め息をついて脱力するゲルガーさん。私も妙なドキドキが治まって一安心だがちょっと残念な気もした。残念?知らない。私は気付いてない。私が残念がる理由など何も無いのだ。私はナナバさんにとって只の後輩で、彼の幸せの為に見返り無く尽くすだけの存在なのだから。


「妹の様で娘の様で、何だかつい可愛がりたくなってしまうんだよね」

「コイツをか?」

「可愛いだろう?」

「そりゃお前にはベッタリ懐いてるからだろ」


ベッタリって何ですか。ちゃんと弁えてるつもりですよ私。…何ですかゲルガーさんその汚いものでも見る様な目は。可愛い後輩に対して酷いですよ。




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