どうか、

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「仕方ないじゃないですか。私、ナナバさん大好きなんですから」

「ふふふ、ありがとう。私も名無しさんが好きだよ」

「みてください両想いですよゲルガーさん!ドヤァ」

「見たかナナバこのドヤ顔!」

「ははは!名無しさんとゲルガーも充分仲が良いじゃないか!」


何も愛は恋愛にのみ存在する物ではないからな。私のナナバさんへのこれは一方的な愛だ。ナナバさんの好きも、親愛や信愛の念だろう。私にはそれでも充分嬉しいものだ。大きさや重さ、形が違っても互いに想い合っているなら両想いってとで!


「それに、名無しさんはハンジやミケとも仲が良いだろう?」

「そうですね。皆さんにも良くしてもらってます」


会う度に何か問題に巻き込まれるのは…正直勘弁してもらいたいが…。


「なら、ハンジは好き?」

「好きです」

「ミケは?」

「あの癖が無ければより好きです」

「ふふ、まぁあの癖は仕方ないね…。じゃあ、リヴァイは」

「尊敬してます」

「団長」

「兵長に同じくです」

「ゲルガー」

「嫌いじゃないですよ」

「おい!何で俺だけそうなんだ!」

「ははははは!良かったじゃないかゲルガー!」

「良くねぇ!」


私の返答が気に入らなかったのかゲルガーさんがギャアギャアと吠える。分かってて言ってるのか、鈍感なのか…まったく。


「大丈夫、ゲルガーさんの事も好きですよ。言ったじゃないですか、貶し愛だって。私がこんなに砕けて話せるのってゲルガーさんくらいなんですから」

「…………」

「お分かりいただけましたか」

「…ああ」

「ね?ゲルガーも今ちょっとだけ絆されただろ」

「っ…ねぇよ!」


ゲルガーさんが酒を飲んだ時の様に顔を赤くして否定する。それをナナバさんがからかって。


私はそのやり取りをぼんやりとした頭で聞いていた。結局この二人の立ち位置はこれなんだな。でも実に良いコンビだ。昔も今も、あの未来でさえも変わらず、互いが互いを支えあえる良き仲間だ。


そうだ。実際ゲルガーさんの言うように、あまり私に深入りはしない方が良いのだろう。私は人類を救う側の人間でありながら今なお人類を裏切ろうとしている張本人なのだ。一人の未来の為に多くを犠牲にしようとしている。本来ならあの二人や他の仲間にすら近付く資格はないはずの私。だが、またも勝手すぎるエゴで離れられずに、関わらずにいられない。


「名無しさん?」

「……はい」

「どうしたぼんやりして。また照れてんのか?」


ナナバさんとゲルガーさんの怪訝そうな瞳が私を捉える。今更考える事でもない。全ては分かっていた事じゃないか。私はイレギュラーな存在で、それを利用し未来を変えると決意した時点で重罪人決定なのだ。


「……まさか、ゲルガーさん相手に照れたりしませんよ」

「っおま!心配してやったのに!許さねぇ!」

「うわああ!な、ナナバさんバリアー!」

「ははっ、何んだいそれ」


ならば今更迷ったところで辛いだけだ。最後までこの罪を背負い、抱えきれない犠牲者の命と共に私も役目を終える。それでいい。


「ほら、おいで名無しさん。私が守ってあげる」


本当は私があなたを守る側なんだけどなぁ。それに、私に守られる価値なんて無いんですよ。緩く広げられたその腕の中に飛び込む事が戸惑われ、ナナバさんの手に自分の手を重ねるだけに留めた。


「ふふ、私は守られるだけの女じゃありませんからね」


重ねた手にそっと指を絡めて、



何を犠牲にしても私があなたを守ります。






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