どうか、
□ナナバさんと例の質問
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「ナナバさん」
「なんだい?」
「質問があるのですが、よろしいですか?」
「私が答えられる事なら何でもどうぞ」
「では遠慮なく」
「うん」
「ナナバさんは男性ですか、女性ですか?」
「…………………それは…難しい質問だね…」
「難しいんですか!?」
という夢をみた。
「あははははは!この時期は毎回この質問だよ!ね、ナナバ!」
「…ハンジだってそうだろう?」
「まぁねー!でもナナバ程じゃないさ!」
私は前から、それこそ前世で初めて見た時から、ナナバさんは男性だと思っていたのだが、どうやらこの判断は一概にそうとは言えないらしい。
つい先日、丁度ナナバさんとの約束にこれから向かおうてしていた時のこと。私は廊下ですれ違った仲間(♂)達の会話を偶然聞いてしまった。
「ナナバさんって本当素敵だよなー」
「あー分かる分かる!綺麗だし、優しいし」
「そーそー!俺、恋人にするならああいうタイプが良いなー!」
ガタッ
最初の方は良かった。大好きなナナバさんが周りにも高評価!誠に勝手ながら、私も自分が誉められたように嬉しい気持ちで内容に同意していた。が、
(恋人…だと…!?)
動揺に動揺しまくった私はそのまま彼らに見えない所で頭を壁に打ち付けた。
(落ち着け…確かに世の中にはそちらのタイプの方もいる…愛の形はそれぞれだ…いや、しかし…私はもしナナバさんがその道に踏み入れた時に心から祝福できるのか?ナナバさんが女性とお付き合いするシナリオは今までに何度となく想像してきた…きっとナナバさんの選んだ女性なら素敵な人だ…必ず幸せになる。いや、私がさせる。でも、その…まさかの同性という路線の場合…私は………うっ)
すみませんナナバさん!私はまだあなたへの愛が未熟だったようです!ナナバさんが如何なる道を歩もうとも、それがあなたの幸せなら私は構わないと!その幸せの為に尽力しようと!そう思ってきたはずなのに…!
「でもナナバさんって女性にしちゃ背高いよな」
(…ん?)
「まぁスレンダーな女性ってやつ?」
(女性?)
「俺まだ背追い付いてないんだよなぁ…さすがに女より低い男じゃ無理だよなぁ…」
「ドンマイ」
「ってお前、そんな事言ったら兵長が…」
「…俺が、何だ?」
「「「ひぃっ!?兵長!?」」」
廊下の先で何かを蹴る音と男達の悲鳴が聞こえた。が、そんなものはどうでもいい。
…は…ははは!なる程!彼らはナナバさんを女性だと思っていたのか!な、なーんだそういう事!はははは、はぁ…心頭滅却の為にぶつけ続けたおでこが今更痛むぜ…。
(それにしても、ナナバさんを女性だなんて…)
いや、待てよ。確かに彼らの意見は間違いなかった。美しく優しくスラリと素敵なナナバさんだ。これは…女性でもありなのでは…?
(っ!)
一瞬そんな疑念が浮かんだが最後。ナナバさんは男性だと思って生きてきたが、次第にその自信が萎んでいく。
ナナバさんが女性?…いや、それはそれでアリだが…しかし…それじゃあ私は今まで…。この世で生きた十数年と前世でナナバさんを愛した数年間の私は……。
「ナナバさあああああん!!!」
「ど、どうしたんだい名無しさん…それにそのおでこ…」
「ううぅ…!」
「ほらほら、手当てをするから顔を上げて」
「私はナナバさんが大好きですっ」
「うん、そうだね。後輩にこんなに慕ってもらえてとても幸せだよ。私も名無しさんが大好きだ」
「例え…」
「うん」
「例え、ナナバさんが男性だろうと女性だろうとバナナだろうと私はナナバさんが大好っ…イテテテ!」
「うんうんそれで?」
「イ、イタタタ!すいませんすいません!もっと優しくお願いします!」
「妙な事を言う子には優しく手当てなんてしてあげないからね」
「ごめんなさい!」
という事があった夜にみたのが以上の通りの夢だ。そしてあれ以来気になって気になって夜も…眠れちゃいるがやっぱり気になるので直接聞いてしまおう!と思った所に面白センサーで嗅ぎ付けたハンジさんも乱入してきたのだ。
「ハンジさんは女性、ですよね…?」
「そうだよ」
「ナナバさんは…ナナバさんは、男性……ですよね?」
緊張の瞬間だ。イエスかノーか。私はその答えがどちらであってもナナバさんを愛し続けるとこの前あの壁に誓ったのだ!さあ来い!一思いにドンと来おおおおおい!
「…ふぅ…当たり前だろう?私は男だよ」
「や…」
やったあああああ良かったあああああ!!!ったくあの男子どもめ!私をビビらせやがって!あの時兵長にもっとやられれば良かったんだ!ケッ!
「良かったじゃん名無しさん!で?めでたくナナバが男だったところで名無しさんとナナバは付き合わないの?」
「へっ!?」
「またどうしてそうなるのハンジ…」
「えー、お互いに大好きなら付き合っちゃえば良いじゃん!」
「いやいや、私なんかじゃナナバさんに釣り合いませんよ。私はナナバさんを守るただの部下ですから!」
「ちぇーつまんなーい。そうだ!おりゃ、相合い傘書いてやる!」
「こら!公共物にそんな子供みたいな落書きしないのハンジ!」
「ふふふっ」
何だかんだ今のこの関係が気に入っている私は、ただただこの日々が続けばと、簡単そうで一番難しい願いを胸に抱くのだった。
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