リクエスト
□はる様へ
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やっと巨人の研究が一段落したのだと言って泣き泣きモブリットがハンジを私の所に連れてきた。それから風呂にいれたりご飯を食べさせたり、今日の私の任務はハンジのお世話となった。
「そういえば 名無しさんはさ、ナナバにバレンタインあげたの」
夕飯を食べている最中にポロっと、突然、何の脈絡もなく投げ掛けれたハンジからの問いに私はきょとんと固まった。口に入れるはずだったイモがフォークから落ちて皿の上に着地。危ない危ない。
「何をいまさら」
再び動き出した思考で落ちたイモを再度フォークで刺し、今度こそ口に入れる。お世辞にも美味しいとは言えないそれを味わいながら一週間ちょっと前に終わったバレンタインを回想してみる。
「ちょっと気になっただけさ。せっかくの恋人達のイベントだろ。名無しさんは恋人のナナバに何をあげたのかなって、ね 」
「……別に、何もあげてない」
バレンタインの日付も知ってた。その内容だって知ってた。朝から女の子達に囲まれてプレゼントを渡されるナナバも見た。
「やっぱりねぇ」
だいたい 名無しさん達は恋人ぽさが足りないんだよ。
ハンジは私の答がさも当然
とでもいうように呆れを含んでそう返した。何なんだ。分かっているなら態々きかなくても良いのに。
プレゼントなんて必用無いと思ったのだ。別に女の子にモテる彼を見て妬いたとかそんな幼稚な理由ではなく。普通に、だってそんなの必要なくね的本心からでだ。
「だってナナバがプレゼントはいらないって言ってたもん」
私はバレンタインの数週間前にそれとなく何か欲しいものはないかとナナバにきいたのだ。だってナナバとか物欲無さそうだし。何あげたらいいか分かんないし。直接きいた方が断然効率が良い。
「 名無しさんが側に居てくれればどんな物より嬉しいよ 」
なのにナナバの答はこれだ。例の爽やかな笑顔までつけてそう言われてしまったのだからそこはもう了承するしかなかった。
「ところがどっこい、ナナバは実は 名無しさんから贈り物が欲しかったんだよ 」
「なにそれ」
本当に何だそれ、だ。
「いやぁーちょっと前にナナバが来てさ、名無しさんからバレンタイン何にも貰えなかったって相談してくるからさぁー!ハハハハ!あ、これ話したことナナバには秘密ね、名無しさんには
言うなって言われてん
だ!ハハハハ!」
いや、秘密ねって…秘密も何もこんな大声で話しておいて何を…。と思って顔を上げたらハンジの手には何処から出したのか酒のボトルが握られていた。いつの間に。
「今からでも良いから何かあげてみたらぁー?このまま放置はナナバ可哀想だよぉー?」
と、言われても何をあげれば良いのやら。今更な感じもあるし、余計に考えものだ。数週間前と同様にあれは駄目これも駄目と酔っ払いのハンジを前に頭を悩ませていると、
「今度ナナバに研究手伝ってもらう約束しちゃったからしっかり宜しくねぇー!」
お前それが本心か。
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