リクエスト
□はる様へ
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「ナナバ」
「 名無しさん?どうしたの?」
飲んだくれハンジから真相を聞いた…といってもいいのか、とりあえずナナバに何か贈り物をせよとの命を受けた後日。いざ実行、と朝からナナバの部屋を訪れた。用意周到に今日はナナバが非番である事は確認済みだ。
「遅れましたが、ハッピーバレンタイーン」
一瞬何のことだと固まったように見えたが、直ぐに私のこの行動が自身がハンジに相談した結果だと行き着いたのだろう。
「えっと、ありがとう?で、良いのかな」
「何をプレゼントしようか色々悩んだんだよまったく。ナナバ物欲無さすぎ」
「それはそれは、手間をかけさせたみたいで」
「本当にね」
まあ、何か欲しい物があったとしてそんな情報が漏れてしまえば他の女の子達がこぞって渡してしまうだろうけど。
「それで、 名無しさんは何をくれるの? 」
「私からのプレゼントは…」
彼氏に他の女の子が言い寄ってても怒りもしない、バレンタインすら一時すっぽかしかけ、普段からこれといって恋人らしいこともしない。でも、そんな私だってナナバのことをどうでも良いなんて思っていない。
好きだと自信があるから、大切
にされている自信があるから、焦らず私のペースでナナバを想ってきたのだ。ナナバを想い、悩み抜いて出したこのプレゼント。
「プレゼントは私です!」
ジャーン!と効果音の付きそうなくらい腕を大きく広げどや顔をしてやった。予想通りナナバは驚いた顔をしている。
「ナナバの非番に合わせて仕事も終わらせてきました。頑張った私!ということで今日は一日私はナナバのものです。さあどうぞ!」
「え、えぇ…」
「さあ!」
「っ………」
というやり取りから数分が経過。ちょ、何か反応してくださいよナナバさん。だんだん恥ずかしくなってきたんですけど。
プレゼントはア・タ・シなんてベタというか、今時そんな恥ずかしい台詞を言えるカップルがいるのかとも思ったが、ナナバは言ったのだ。物は無くて良い。私が側に居ればそれでいいと。
殺し文句もいいとこだが、それ以外ナナバにあげられる物も浮かばなかったし、この言葉を頼りに案を練るしかなかったのだ。自分ではそれなりに的を射たと思ったのだけど、ナナバの反応を見る限りどうやらとんだ勘違いだったのかもしれない。
「要りませんですか…」
少し落ち込んだ気持ちでもう一度ナナバを伺っ
てみると、少し赤くなった彼の頬と耳が目にはいった。
「ナナバ…」
「要る、要るよ。ありがとう。すごく嬉しい」
「…どういたしまして」
まるでその顔を隠すように私の広げた腕にナナバが入ってきた。胸に耳を当てるように抱きしめると、ナナバの少し早い鼓動が感じられてせっかく隠したものも意味をなしていなかったけど。まあそこは黙っておいてあげた。
「ハッピーバレンタイン、ナナバ。大好きだよ。愛してる」
「 私こそ、名無しさんが大好きだ。愛してる 。でも…この展開は予想外過ぎた…」
「ナナバが私を独占できるプラス私も必然的にナナバを独り占めできる!画期的良案!ドキドキしました?」
「ふふっ、そうだね、いろんな意味で今もドキドキしてるよ」
少し体を離されると代わりに軽いキスが数回ふってくる。その際に「名無しさん、実は私が女の子からプレゼント貰ってるの妬いてたでしょ」なんて耳元で囁かれて私までドキッとした。
ナナバは案外シャイだから滅多に大人の情熱的なキスなんてものはしてこないし、キスした後にちょっと照れてさえいるのに、何だ…今の悪い顔は。
「さて、それじゃあ ##NAME1
##を独り占めできるわけだし。 せっかくだからデートにでも行く?」
「いいの?部屋の方がイチャイチャできるんじゃない?」
「たまには外でイチャイチャしてみようかなとね」
「私よりシャイなくせにできるの」
「まあまあ、何事も挑戦だよ」
前回もそう言って進歩はなかった気がするけど…という言葉は呑み込んだ。今回私は彼のものなのだから今日一日はナナバの好きなようにさせてあげよう。
少し前を歩き出したナナバの手に然り気無く触れると、振り返った彼が笑顔で手を繋いでくれた。
「何処に行こうか」
「ナナバが居るところなら何処へでも」
「…何処で覚えてきたのそんな殺し文句…」
「何処って、ナナバから?」
ナナバも喜んでくれたみたいだし、たまには女の子らしく素直に恋人に甘えるのも良いかもな。
このまた後日、ナナバのついでで一緒にハンジにお礼をしに行き二人で散々こき使われるとも知らずに私達は甘い一日を過ごす予定です。
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