わるいこと


□自伝的道具の扱い方
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 パパン、と速度を早めた肌の音に、ベジータが何かと戦い始めたと、ブルマは押されながら勘ぐった。そうしてこの荒さでは到底、一緒にイくことは不可能だと悟ると残念そうに力が抜け、掴むものを、ひらく。
 しかしそれはベジータにとって予期せぬ不意打ちとなっていた。
 ブルマは、突然の後ろの変化に集中した。――ベジータだ。ゾクゾクしながら聞き耳を立て、そっと振り返る。すると、イク寸前の顔だった。

「やだ……すごいエロス」
 そう、妻が呟けるほど。

 ブルマの手の圧迫から解放された尻尾が血流を戻し始めた瞬間、端から先にかけて神経伝達の電流がビリビリと駆け巡るので、ベジータは堪らず声がでていた。
 同時、ブルマが腰を押し出した。それは覗き見に対して自ら罰をうけたいと……。
 いや、彼女が奥を欲した証しだった。

「あっ、あう!」

 ベジータが、ずるりと入口の輪郭近くまで下がる度、中はぐずり、無骨な竿先にブルマは派手に喘ぎだす。すると彼女の白肌を茶色の物が滑りだす。
 突然の異物感に、ブルマの体は驚き強ばって、ふにゃりと崩れていった。そうして怖怖、男を見ると、背後から顔を出すものに……声が上ずった。

「ベジータ! あんた、どうして黙ってたのよ、それ、尻尾じゃないっ」

 唖然とした顔のブルマをよそに、ベジータの声は実に高揚げだ。

「俺も、久々の対面で操作方法を誤っているようだがな、なあに、じきに馴れる」

 そう言われ、ブルマの体は静かに粟立った。男の動きを変えたものはこれだったのかと。
 茶色のそれは直ぐに動いた。自分の背を押さえつけ、くるりと胴体を巻くと上へ引き揚げたが、驚いた体は腰から崩れ、落下しそうな所を拾われる。
 するりと足首を捕らえられ、次にはぷらりと吊られて、反対向きのベジータと顔を見合わせていた。

「はっ、面白い遊びだろ?」

 そう突き返されブルマの体は、かっと熱を上げる。羞恥に満ちた空気が後押し脚間がひどく熱い。
 ブルマは、昂る鼓動と羞恥心のなかで自分を見下ろす鋭い黒目が静かに嗤うのを見たときだった。するりと体を流れた異物に身震いを起こす。
 ふさっ、ふさっ、ふわっ、ふわっ、ふさあっ……
 重力に負けて下に下がった乳房の先をやさしく擽る毛先に、たちまち感度を示した乳首は固くなる。それを、ベジータが口に含み舌で転がしだした。
 ブルマは原始的かつ奇妙な刺激に歯を食い縛り小刻みに震えた。ベジータは容赦なく顔を覗いてくる。クネクネと動く尻尾が太股の間を駆け抜けて、そうして、あらゆるところを刺激されたブルマからは悲鳴に似た淫靡な声が出ていった。

「気に入ったか」
「やあっ! ああん」

 ブルマは、自分の熱が尋常ではないと知ると、宙にで逆さになった体で際どい世界だと感じ入った。嫌だと思うなら手で払えば良いものを通り抜けを許し、尻尾の擽りを受けている。
 それは快感を味方につけようとしているのかわからないが。だが途端に――ブルマの体がもやついた。全身が疼き、痙攣に似た刺激が抜けてゆく。

「こんなものに犯されるなど、考えちゃいまい」

 ベジータは、ブルマの心を拾うかのように動く。擽ると見せ掛けたフェイントで何度も彼女の身体を煽ってくる。

「やぁ……いやぁあ……」

 ブルマは、逆向きで頭に血が昇りだすとこうも辛いのかと全裸で吊らたまま、息を荒くした。
 しばらくして、尻尾の往来が消えた。

「終わっ……た……」

 しかし突然の解放感にも関わらず、翻弄された体は静かにはなれない。近付くベジータの指を追うブルマは、自分の破廉恥さに息が揺れる。
 そうとは知らないベジータは、ブルマの脚を撫ではじめた。すると、ヌルヌルの液ダレが下へ流れはじめ、あまりの凄い量に眉が上がった。

「やっ……あ……あ」
「どういう状況だこりゃ、いつの間にか毛先がビチョビチョに濡れてやがる……」

 声色を落した男は、尻尾の先を彼女の顎に下とすと骨骼に沿って体液の道を描きはじめた。
 ブルマは、見えた自分の姿見に息を切らせる。そこに写る顔は恍惚として、これからのいやらしい空気を楽しもうと――そんな好奇に溢れた目をしている。
(あぁ、アタシ、次の一手に期待してる? そんな顔で、どうしちゃったというの?!)

 それは、よく流れた。顔から体を滑り、恥丘までくると筆先が性毛を弄りはじめた。毛同士が絡むチクチクした甘く痒い刺激に声が高く上がってゆく。そうして愛液をっぷり含んだ尾筆は臀部をなぞった。さあっと円を描きながら移動し、お尻に緊張が走る。
 ブルマは、もじもじするほどこの瞬間に固唾を飲んで、ベジータの動きに注意した。
 男を変えた尻尾事情は本来の忍耐維持が上手く保てず、今ではレアな一面が顔を出している。支配欲だけが先行して、入ればすぐに律動を速められ、自分は棄てられそうだ……。
 そうこうする間もなく、ブルマの体勢が変わってきた。足裏が地に着くと、一本の足だけ尻尾によって引き揚げられ、即、コトが始まった。

「あうっ! あうっ! あうっ!」
「こう突き上げれば、何も反撃できねえもんなあ、あざといお前は……こうなる事を待っていた筈だ、ほらまた腰が上がりやがったぞ、そんな締め付けで俺を満足させる気でいるなら、バカをみるぞ」

 毎回毎回、自分達は一生懸命に互いのどこを擽っているのだろう。
 からだの全てを使って、男と女を狂わせ、男の支配欲を見て、激しさのなかに一気に身を委ねる。
 卑猥な粘着音、酷い声が、互いの下半身をねばこく濡らしながら――数年積み立てた膣圧トレーニングを受けてみろと、男を言葉通りにイかせたい。
 ブルマは、ゆらゆら揺れる予測のつかない尻尾の影を追い、首を下に落とした瞬間、激しく波打つ乳房と対面した。
 視界に、まるで偵察しに来たような尻尾がうつった。それは彼女の乳房の先端をつつき、くすぐり、輪に沿い滑りだす。
 彼女の腹は、ハッハと忙しい。本当に――こんな現実があっていいのかと、夫の過去の悪行を思い知らされる。これは性欲の果ての責めであると……。

「はーっはっは、いいか、いいんだろう?」
「ああもう……アタシ、もう」
「何を言っている。こっちは遊び足らんのだ、付き合って貰うぞ」

 自分をとりまく世界に正気がなくとも、動物化した男は悠々と尾を高く揺らした。

「ひいいいっ、ん」

 尻尾は彼女の脇腹を狙う。左右にくねり踊っては感度を上げた腰が弓形にしなるとき、吹き出した愛液がシーツに激しく飛び散った。

「やりやがった」

 その時ベジータは思い出す。かつて同胞らが女鳴かせの道具として使えると言っては、締まりのない顔を見せたことを。
 ふと視線を前へやると、女の体に先約がいた。――俺の尻尾だ。そいつはブルマの弱い部分を責めていた。ひくひくと体をクネらせ、角度を変えて粒を弄っているのか、甘い声が響いてくる。次に喘ぎ始めた時には体液が脚や床を濡らしはじめた。中の愚息がつんと痛みを発してきた。まるで尿意に堪えるように下腹部をギュッと締めてしまう。
 ベジータは、じっくり留まり続ける尻尾を掴むと、ブルマから払い退けていた。

「共同作業の味は、どうだったか」

 ベジータが、そっと陰部を左右に拓くと、ひどく硬く、充血した粒に出くわした。更に開き飛び出させると、指の腹でぬるぬるコリコリと回った。

「あっハアッ! ああっああっ」

 再び、熱い濡れが生じた体にわざと波をたて、陰部をタッピングしてやると脚からぷるぷる震え、奇妙なほど、か弱く見えた。一方の尻尾は、ブルマの顔を這いはじめ、唇を割って歯にあたった。

「あ……っ……いい〜! い、イキソ……っ!」

 漏れた言葉を吐かせるように、尻尾はブルマの顎を落とすと、見事に服従のポーズへと導いた。ぱっくりと唇を開け、サイヤの象徴をくわえた姿に、男の顔は面白そうに歪みっぱなしだ。
 ベジータは、白桃を掴み軽くはたく。パチン! と脂肪のあつい肉体に乾いた音が響き、後は大袈裟に音が部屋に鳴る。
 ズブリと入れ込むと、いつも以上に中は窄んだ。前を向いたままの女の顎がどんなふうな顔をしているのか。ベジータは彼女の肩から覗き込んだ。

「どうだ」
「ああっ……もう」
「下品なお前の体液が、どんどん流れてきやがる」

 毎度毎度同じであることも面白くはない。新たな、覚醒として動き始めたその身体を体じゅうで可愛がるのもいい――。
 そして、強靭な己の体をじんじんと熱く貫いてくるのはブルマの甘噛みだった。まるで側女の施しだと過去の野郎話がよみがえる。

 こうやって、ああやると……。こうしてみて、その動きなら、すこし強めて……とかどうとか、こうとか。

 女は、涎でふやけた尻尾を自ら乳房に当ててよがりはじめた。絶頂に近い顔を見ながら乳房を揉みほぐす。すると、息を震わせながら口を噛む。それは何度も、何度も。

「うっ……あ、ぁあ、ばか……やろ」

 噛まれると、尻尾に伝う快楽電流が熟した熱のなかへ引きずり込む。膨張する愚息は痛みを添え、ジュクジュクと潤む女の中で突破を急ぐ。

「ああ、くっそ」

 互いに半泣きの笑顔をつくって、どこに向かおうとするのか。いまは自然に狂ったリズムがあるだけだった。

「はあっ、はあっ、はあっ……思いの外こいつは、やっかいだな」

 ベジータは、言葉通りの自分の状態に、本来の体以上の刺激に困惑を隠せない。五体満足過ぎるからだ。
 そうして何かと熱を上げる愚息に眉を挙げるばかり。失神してゆくブルマの声のなかで口走った内容は、実に情けなく、一人弁解する羽目になっていた。ことあるごとに寝首を掛かれても困る。今のうちにケリをつけておくべきだな……と、体を襲う波を以て本気で思う。


「っ……ウウッ! ……はあっ……はぁ」


 その後―――、無様な息を調える男のベッドに落ちた尻尾は液体にまみれ毛を寝かしていた。しかし役目を終えても主張は強く、男の目に残る。
 すると何かが光った。茶色の毛並みに絡む小さな欠片に、ブルマの爪の装飾品だと思い返す。
 ベジータはそれを宙に翳すと尻尾と一緒に陽射しに投じるのだった。



【終】
2018.10/10――2019.4/28
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