わるいこと


□開発計画
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「とりあえず目標達成ね!」
 ブルマは、ベジータから1週間与えてやるからアンダースーツを製作しろ、と言われ4日目に入る。要点を把握すると当初のよりも幾分も早く進むのは彼女の良いところ。
 しかし、今回は超えられない一つの難点にぶち当たっていて、それを除けば完璧なのにと思いながら口を開く。
「詰めちゃってても、解決しないなら寝るが勝ち! だって……」
 約束の期日まであと3日もあるので寝溜めが可!と気づいてにやついた。
「天才はラッキ〜よねぇ♪」
 ラボから機嫌よく出た所で、ベジータと部屋のなかで鉢合わせしていた。
「げっ」
 ブルマの不可解な言葉の出迎えに男は眉を潜め何だと思うも、彼女の耳奥に見える畳まれたブルーのそれを見つけて足早に進んでいかれてしまった。
「出来たのか?」
「あっ、ちょっま」
 今行かれれば、寝溜め計画が中断されるのが目に見えた。第一、この男に素直に寝たいと言っても「そうか」と言ってくれるものでもないのだ。
 ブルマは慌てて、すたすたと進むベジータを引き止めるが、一方のベジータは、4日目にして焦りを見せてもいない彼女の様子に完成度の高いものがあるとし接していた。

「試着するぞ」
「まだだめ!」
「何故だ」
「色が」
「そんな物、気にはせん」
「だめ、気にした方がいい絶対に! だからまだ駄目」
「俺は貴様のような衣服狂いじゃねえ! あと3日あるなら試着段階で不備が出ても文句はなかろう」
 その言葉を聞いて、完全に計画は不可能の状態に陥ったブルマは、半ば投げ出すようにベジータに言った。
「知らないからね!」
「意味が分からん」
 男は、苛々しながらスーツを奪うと試着していく。厳密にいえばラボに試着室がないため、ベジータはその場で着替えをする。そして着替え終わるとブルマに見せながらチェック箇所を言い、宇宙船の重力室内か野外に動きに行くのが恒例となっていた。
「始めるぞ」
 緊張した顔のブルマを前に不可解だと思うも、ベジータは構わず要点の説明を上げていくが、彼女は自分の方を見ないでパソコンに記入していく。
 何時もならば、食いついて話を聞き意見を出し合うのに。今のやる気のない態度は何だと、ブルマの顔を少しばかり強引に、己の体の方に向けさせた。
「きゃっ! いったーい! 何すんのよ!」
 ブルマが悲鳴と文句を同時に言って目を開いたとき、目の前にはベジータの見事な胸筋。
 視線を逸らせば、うっすらとではあるがポチリと点在している先端に肩をおとした。
(……やっぱり失敗作ね)

「黙れ。軟弱男のように優しくしろと言うのか? これはビジネスだ。目をそらすな」
「だから〜」
「数度寝たからと俺が優しくなるとでも思ったのか? 甘いな」
「……わかったわよ! 仕事モード入るわよ! 言っとくけど試着拒否した理由を先に言ってたこと忘れないでよ! あんたが実行させたんだからっ」

 そのブルマの言葉にひっかかりながらもベジータは腕を組んで不機嫌さを表している。彼女は深呼吸をして、渋々折れるしかないように動く。
 けれど、ベジータの姿に目を戻すと臓が高鳴ってしまう。その筋肉美に加え、見えるものの強烈さに、この場所に鏡が無いことが幸か不幸かと思うほど確実に自分の体は、熱いのだ。

「この関節部分のたるみだな。攻撃において脚は最もよく使用する箇所だ。それに生地が固い。これではごわついて動きに支障がでる範囲だ、どうにかしろ」
 ベジータが布の余りを軽く引くと同時に動くものにブルマは凝視した。
(ぶっ……何てパンツ履いてんのよ! と、父さんのかしら……母さんのいたずらって事も……)
「聞いているのか?」
「きき聞いてるわよ! ここが嫌なんでしょ!」
と、焦りをごまかした悪ノリは手のひらでパンパンと股関節を軽くはたく。
「……馴れ馴れしいな」
 引きつり顔の男の様子は違和感を隠すように語気を強めると、そこの形は変化していた。
 ブルマはごくりと生唾をのんだ。何故気付かないのだろうかと――好奇心がブルマを動かしてゆく。
「要は、腰から脚にかけてを締めればいいわけよね?」
 言うと、低く冷静なベジータの声が返ってくる。これから身に起こるコトなど全く気にとめていない様子だ。もちろん意地っ張りな彼の演技であると、知っている。
 ブルマは、ベジータの前に屈み、スーツを掴み上に引き伸ばした。
「関節周り計り直すから、丁度いい所で教えて?」
 言うと、ぐいっ、と引き上げる。するとその都度ふっくらとしてくる、目の前のソレ。ブルマはドキドキしながら下から見上げると、ベジータの焦りは大きいようで、何度も喉仏が下がっていた。
 そう、いつもなら下腹部のパワーネットのお陰で外からは見えない仕組みにはなっているが今回は調整が合わず、全てが半シースルーといった具合であった。
 また不思議なことに、深い色という物は錯覚を起こす。重なれば重なるほど濃く見え、つまりそれは至近距離でしか気づくことができない、というわけで……かくして、ブルマの興味深々な悦覧に満ちた時が進んでいくのであった。
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