わるいこと


□自伝的道具の扱い方
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 その日は、いつもより寒い朝だった。耳障りなアラームを止めたくても、腕を出したくはない。パステルカラーのピンク色の毛布に包まれた自分は、まだまだ眠りたいし、起きたくはないのだ。
 寝返りをうつと、ぐったりと動かない体にあたった。しばらくするとそれは折り重なるように、こちらの体にのし掛かってきた。
 ―――重い。
 なのに、すうすうと眠りについている。別に鬱陶しいとは思わない。ただ重いだけだ。
 そうこうしていると、トーンの上がったアラームを嫌でも止めたくなる。まあ勿論、起きない自分が悪いのだが。あの温かい武骨な手を求め体を少し押し込むと、ますます時計が遠ざかる。
 ……しかし煩い。
 けれども起きたての空気に体を冷やし、硬く冷たい機械時計に触れることは耐えられない。こうもほかほかと暖かさを共有していれば誰だって思うはずだ、と上の体に腕を回していた。

「おい、鳴ってるぞ」
「……聞こえない……」

 自分の睡眠は、浅い夢を見るほど現実と癒しの狭間にいた。起きてしまえば負けになる気がして再び毛布を被り直す。
 すると突然、パンッ! という音に男の小さな破壊活動がぼんやりと頭に知らされた。

「今日は会議だとか言ってなかったか」
「夢よ……だって……」

 空調は動いている。無風の温風に効きが悪いと感じるのは夜に汗を掻きすぎたからだろうか。もそもそと毛布が身を擽ると、余韻をのこした体が応えてしまう。

「あ……ん」
「全く、どんな夢だ」

 毛布が形を変えていった。もこもこと波打っては静かに脚が縺れあう。じっと互いの熱で暖をとるように、適度に密着を繰返しながら。

「……遅れても、知らんぞ」

 それでも夫は毛布を少し剥ぎ、強制的に起きろと促してくる。そもそもこの男の体温が、今や自分を動かさないってのに。なのに、毛布が移動し外気をくれる。
 だから、寒さを遮断するため大きな体を壁にする。肩に置いていた手を移動させて深く、下へ潜り込む。
 そう、これでも一応に男の時間にも敬意を払っているのだ。

「こうなると段々……唇の先から目覚めていきそう……」

 静かな室内に、イタズラげな甘い声が男へ問いかけた。次第に布団に籠り始めた熱の中、頭を上下すると蒸た体が酔いそうだ。ドクッと蠢く口の中に、しょっぱい味が広がってゆく。
 ふいに支えられた頭から滑る指が耳に架かった。耳たぶのピアスキャッチを転がされる。
 指の捻りに合わせ、唇をすぼませ寄り添うと、男は何かから逃れるように掌でこちらの肩を押しやった。

「ふあ! ……ん、もう」
「何が、もうだ。勝手にデカくしやがって」
「しまう場所、あるわよ」
「会議より性欲か……とんだ責任者だな」

 少し離れた脚を再度絡み合わせると、ふさふさ、ふさふさ、と腹にあたるいつもの甘えに加え、不法侵入を繰り返す者へ男が舌を鳴らした。

「どいつもこいつも……」
「や、……あ、あ」

 男の視線がこっちを向いた。微睡みの中で貰う刺激は自分をおかしくさせるのか、男の眉の詰りが気になった。

「……ぁん」

 布団の中で起きる情事……。柔らかい肌触りの物が尻をまるく通り、熱い部分を擽りはじめた。
 ああ、何かの罰が始まったと惚けた体から力が抜けた。無痛の、絞まりのない永遠の快楽は眠気などすぐに取り払うかもしれない。

「ベジータ……起きるから……変なことしないでぇ」

 ――男は昔からその辺の物を何でも責め道具にした。今は毛布と冷気とペットらしい。

「いやあ〜タマ〜」
「大人しくしろっ、……ここだ!」

 言うと直ぐ様、布団の中に入る腕が猫を追いかける。蠢くものを殺さぬ程度の力で捕まえたらしいが動かない。
 こちらは布団を全て剥ぎ取られて寒さで体が硬直化してしまってるのに。

「ち、うっ!!?」

 妙な声を出したベジータは、ブルマの臀部に目を剥いた。尻と陰部の境目でヒクヒクと小刻みに痙攣する茶色い物に向けて、艶声が被さってゆく。

「寒いわよばか……ぁあ〜ん」
「まさ……か、こいつは」

 そのまさかだった。手に掴む茶色い短毛で覆われているものは間違いなく尻尾。懐かしい気分になどならないが、己自身に掴まれて毛羽立つものに違和感しかない。
 ベジータは、その無意識下で行われた光景に情けない青息を出していた。隠すことなど出来ない素直な性欲に眉が詰まってしょうがない。

(なんて失態だ……前触れもなく生えやがって! 何も感じなかったのは……もしや下部に感度が集中していたからか? ブ……ブルマの奴め)

 男は、出来事を頭で問いながら次の満月は――とカレンダーを見やった。「寒い」と言うブルマの不機嫌な声を横に真顔で日数を数えてしまう。
 だが突然、ぎゅ! と掴まれた尻尾である。
 再び寝返りをうつブルマの手中に捕らわれた尻尾は、豊満なバストを隠すように埋もれていった。

「ぐ……ぅっ!?」

 簡単にバランスが崩れたベジータはたまらない。腰から中心に関節が抜け、幼児期以来の感覚が体を襲う。みるみる力は脱力し、まるで波に引きずり込まれるようにブルマにどさりと被さった。
 突然、のっしりと体重を預けられた彼女は驚きながらも甘い息を漏らし、腰をモゾッとさせる。伏せた体での密着度は最奥へ侵入を許すどうしようもない形だったからだ。
 昨夜は繋がったまま限界に落ちていた。その余韻が彼女のなかにはしっかりと残っていた。ブルマは含み笑いをしながら、抜けないように脚をクロスする。
 筋肉男は、もがく。膣圧の潤みが増して来た。ひしゃげるブルマは男の胸板に更にプレスされ、苦し紛れにぎゅうっと掌の力を強めていた。

「うぅっ……ぁあ!」

 ベジータに、そう声を出させている所でブルマが驚き振り向くと、耳を赤く染めた夫が居る。

「ま、前を向け!」
「どうしたのよ?」

 と微睡む声色で上体を立てられ、尻尾がマットレスに押し込まれた。

「……ぐぅ!」

 ブルマは技術者である。しなやかに見える細い腕だが、腕を使う仕事ならではの指の力、腕力はその辺りの女性に比べるとある方だろう。またそれらは握力も比例していた。
 ただ、これは地球人との比較であり、サイヤ人の男に利く剛力の持主という訳ではく……原因は、“生まれたて”の尻尾というポイントにあった。

「……や、めろ」

 ブルマの胸の間でひくひく、ひくひくと痙攣するのは、かの尻尾。時折、水を得た魚のように蠢いて、ブルマの擽ったそうな声がする。

「やあんっっ」
「……」

 しかし、拒絶した割には随分と長くなるが二人が体を解くことはなかった。惑溺しながらも、どこか慣れ具合を楽しんでさえいるようにも見えてくる。
 とりわけ、ベジータ等はブルマが潰れないよう身を捻りながらバランスをとる為、思わぬ圧迫感に下半身が襲われた。
 捻る→モミモミ→捻る→モミモミ→捻る……を繰返した数度目の腰の捻りで、遂にはベジータに息を吐かせ、しどけない様で手をつかせてしまう。

(力が……入らねぇ)

 男はそろそろと震えながら歯を食いしばり、腕を立て膝を立て、ブルマの体から離れる準備をしはじめた。

「いい加減にしろよ? お前が放さないならな、こっちから」

 ベジータは、女から愚息を抜きはじめた。だが、それは彼女の内腿の間で絞られた。

「あ〜っっ」

 ブルマが気の抜けた声を出したが、ズルリと抜け出したそれは、なんともデカく、かちりと強さを増していた。
 ベジータは彼女を見下ろした。その景観は天晴れともいえる、己が一番好きな位置。
 それは決して抵抗できない白い背面の様であり、俄然、むくむくと血がみなぎってくる。
 見れば白い体の至る所には昨夜の情事の痕があって、しっとりと汗ばんだ肌の濡れは艶やかで、いつでも後ろから突き上げることが出来る安易な姿だ。
 ベジータは、体をゾゾっと熱の虫が這うようだった。尚も下半身に集まって仕方がない。
 すると、我慢できなくなったブルマが腰を上げ動きを変えてくる。真っ赤に発情したそこはテラテラと蜜を潤ませ、きゅう、と息子を噛もうとしているかのよう。

「誘う気か?」

 しばらくして、男の背後に揺れた尾に、体を移動させようも、いかんせん動きにくい。まるで部屋から出るなと言われている気分になる。
 現在の醜態はベジータを追いやった。認めざるを得ない愛欲は、目を通し身体中を支配しだす。モノと尾に痛みすら与え、主の帰りを待つそこへ、誘導と催促をされていく。

「くっ……そ」

 まるで脅迫だとベジータは、締まりつづける彼女の中を睨んだ。ぽたぽたと額の汗が顎を流れた。ぴくりと額の血管が動き、眉頭がしなり、情けないほどの有り様だと顔の皮膚感が伝えてくる。

「お願い……ベジータ」
「……長引くと会議に支障がでるな。まあいい、お前は今、我が社の顔だ。今の顔で出ていけば男共に嗅がれてしまうだろうよ、ここがな」

 ――と、ベジータは後ろから先をつぷりと少しだけ入れていった。

「ああん」
「はッ!!」

 入れた途端、きゅっと引き締まる膣口に、ベジータは思わず息を噛む。一引き、二引きを繰り返して、少しでも抜こうもなら、ヒダの触手が追いかけて来る。
 ―――許さない。離さないと、ぬるむ手を伸ばし捕らえると、直ぐさま力を奪われる想像がベジータの体についてまわった。

「な……う、くぅ……く、そぉ〜」

 ブルマの後姿は、実に事を堪能していた。柔らかな吐息を宙に撒き、しなりを加えた腰をよく揺らす。焼けつく乾きに悦入ることがあれば、電気信号を呼び起こして、後はもう早く、やりやすい。

「ほら、イケよ」
「ダメよ、一緒に……」

 熱い熱の中で、息をあげはじめた男は、白い肌を落ちつづける汗が愛しくなる。それらを全て舐め尽くしたい程になってくる。

「ベ……ジータ……もっっ……っと来てえ」

 女が腰を突き出し回してくる。目を丸く出来るほど、尻まで愛液が広がっている。自ら腰を寄せてくる女は、願を掛けるように手の中の物を揉みくちゃに揉み合った。
 全身で泣き震えるブルマの吐息は、イク寸前の合図を連れている。きっともうすぐ……もうすぐ果てるだろう。気を放出するかの如く、腹から出る本気の喘ぎを誤魔化し甘噛みするのは、くしゃくしゃになった布団。
 だが本日は、もとより尻尾と来る――。

「ん、ぅ……うァッ……ッ、い……い!」
「ちく……しょ……うめが」

 いつの間にかに捕らえられた尻尾が女に食い付かれる。
 間も無く伝わる異変に、思わずベジータからも声が出てしまう。狂った噛み合わせに混乱した。甘噛みと、またはそれ以上の指の圧迫に男の喉元は枯れていった。

「ク……ハアッ、ハアッ!」

 尻尾のせいでビリビリと下半身が震えを来たし、もたつく疼きが駆け巡る。四肢と椎を走る電熱が異常なまでに作用をし、己の欲をぶちまけた。

「ベジータ、興奮、して……る?」
「(言えるわけねえだろ!)」

 ブルマの乳肉の間に収まる己の尾の逐一の感覚は、嬉々とし椎に伝わってくる。女の口淫にやられ、うかつにも息を上げてしまっていた。左右の胸の脂肪の柔らかさの中で、どっと血がたぎる熱で、体が痒くなりそうだった。
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