feeling

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「お前この前逃走しやがったな」

「逃走?帰っただけじゃん」

「それを逃走て言うてんねんぼけ」

「だっておもしろくなかったもん」

私の仕事先の洋服屋にやってきた横山たまに来るんだけど選ぶ服のセンスがないんだよコイツ

センスというか横山に合ってないというのが正解か

「しかも錦戸と一緒にやろ?なんかハプニングでも起こった?」

からかうような顔をして私を見るこのバカに持っていたボールペンを肩に刺してやった

「は、図星なん?」

「そんなわけあるか錦戸さんになんか興味わきませんから」

「好きになったとかいったらおもろかったんにーぐははは!」

この人は良くそんなこといえるな、そもそも彼女いるっつってんだろ

「それより横山はいい子いたの」

「めっちゃ居った女の子てだけで皆かわいく見えたわ」

「長年彼女いなかったらそんなふうになっちゃうんだね」

「かわいく見えへん奴なんかお前くらいやで」

「早く帰ってくれませんか」

「客にはよ帰れてどういうことや俺は服を買いにきたんやで」

じゃあご勝手にとその場を離れようとするとこれ見てと横山には不似合いな服を体にあてがっている

どうしてこのおっさんは若作りしようとするんだろう三十路手前の奴が着る服じゃないですから

「そもそもここに横山に似合う服なんかありませんから」

「おまっちょっと酷すぎんで!」

「あははは」

「事実でも言うな!そもそもお前からしたらかってもらいたいやろ」

「まあそうだけど」

「なら言うな!俺は何て言われてもこれを買う!」

「あーはいはいどうぞどうぞ」

レジを指差しさっさと買って帰りなさいとハッキリいってやった

周りから見れば凄い酷い奴だろうけどある意味ふざけているところもあるし横山だって何とも思ってないのはわかってる

いつもこんな感じだけどそれが楽しい

「二度と買ってやらん」

「それ前にも聞いた事あるけど」

「くっそー覚えとけばばあ!」

買った服が入った袋で私を何回か叩いて出て行ったとおもったらまた戻ってきた

「何ですか忘れ物ですか」

「今思ったんやけどお前もうすぐあがるやろ?飯いこ飯」

「やだよ眠たいから早く寝たい」

「おごってやる」

「食べたら帰るからね」

「うわ、釣られた」

顔を見合わせて2人で笑う、何だかんだ言って実は楽しいんだよね

時計を見るともう上がる時間を過ぎていて急いで準備してお店を出た

どこで食べるなんて話してたけど結局決まらずいつもの居酒屋

「えーっと‥どういう事ですか」

目の前にいる彼を見て横山に言った

「こっちのセリフやねんけど横山くんどうなってんの」

「え、普通に皆で食べた方がうまいやん」

どうやら初めから錦戸さんと約束をしていたらしい、というか正確には錦戸さんカップル

「おかしいでしょ、私絶対必要なかったでしょ」

「そっちカップルで俺男1人とか寂しいやん」

「横山くん誘ってきたんやろ」

「いや、俺はそもそも錦戸だけを誘ったわけで‥はい、すいませんでした」

話を聞く彼女は何を言ってんだといわんばかりに横山を睨んでいる

3人は知り合いでいいかもしれないけど私からしたらこんな気まずいことあるか

「まあ仲を深めたらええやん‥?」

「横ちゃんそれ本気で言ってんの」

「本気っす‥」

見るからに気の強そうな彼女とは絶対に仲良くなれないと既に思ってしまった

「この子が亮と仲良くなってどうすんの」

「どうもこうも別にええやんけ、そもそもお前のその束縛かなんか知らんけどほんまうぜえ!」

うわーきつい、これはきつい!綺麗な人なのにな‥そして横山きれるなよ

「はあ?あんたね「はいはい終わり終わりお前と横山くんほんま仲悪いな」

苦笑いしながら2人の会話を中断させたのは錦戸さんで飯食うだけの時間くらい黙れと彼女の肩を叩いた

「お前錦戸の彼女やからって俺が手出さんとでも思ってんか次口聞いてきたら殴るで」

「横山うるさい興奮するな、あれですよね私たち2人で別の席で食べるんでごゆっくりどうぞ‥ほら、行くよ横山」

はあ?という横山の腕を引っ張って無理矢理たたせた

何か言いたそうな顔をした錦戸さんの顔が見えたけどすいませんでしたと言って会話が聞こえないくらいの離れた座敷に座った

「うざ、なんやあいつあんなやつ呼んでへんねんけど」

「錦戸も俺とあいつ仲良くないの知ってんのに何で連れてきたんやろほんまイカレたカップルや」

「まあまあ」

落ち着けとメニュー表を渡しても尚口は閉じる様子のないバカ

「お前だってはあ?て思わんかった?お前と錦戸仲良くなんなみたいな事言うてたやん」

「まあ、彼女なんだしそういう人だっているよ」

「いやいや俺はそういう奴ほんま無理や可愛くてもあんなやつは無理!嫌でもわかったとか言うやろ普通」

「しかも始めなんも言わんやったのにメールであいつも来るとか言われたらもう断れへんやんけ!」

「いい加減落ち着きなさいご飯まずくなるよ」

「ああせやな‥あんなやつの話したら飯まずなるわ」

「ははは‥」

女の子にあんなこと言うの初めて見た、それより悪口とか言う人じゃないのにな

「まあ、食べなさい今日は私が出すからそんなに怒んないで」

「別にお前におこってるわけちゃうやん、あのくそ女「あーはいはいはいはい」

横山くんもうわかったからいい加減やめなさいよ

「ちょっとトイレ行ってくる戻ってきてもその話したら絶交ね」

「分かりましたよ」

ほんとにわかってんのかよと思いながら鞄を持ってトイレに向かった

ただ化粧直しに来ただけなんだけどね

横山の前だからどうでもいいのかもしれないけどヨレてないかちょっと気になる

ささっと済ませてお手洗いから出るとちょうど錦戸さんがやってきた

「なあ」

あえてスルーしていくと後ろからそんな声がして振り返る

「あ、なんでしょうか」

「なんかごめんな」

「え?そんな謝ることないじゃないですか」

「あんな事言われたら気分悪なるやろ、あいつそういうのわかってないねん許して」

「大丈夫ですって気にしないでください!私こそ来ちゃってごめんなさい」

「そんなええて」

「そのせいでこんな風になっちゃったんで‥じゃ、行きますね」

「ん、なんか着いてんで」

そう言って巻いてある髪の毛についた服の糸くずを取ってくれた

さっき鏡みたのに気づかなかったな

「あ、ありがとうございます‥」

ふわっと香ったのはあの時の匂いでやっぱり懐かしくなった




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