碧の涙

□美酒は時には、恐威にもなる
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今日は、新人歓迎会だ。
新しく入ってきた第104期生達の
お祝い兼ね宴パーティが開かれたのだ。

「調査兵団に入団してくれた
104期生を祝福しつ今夜は無礼講だ。存分に楽しんでくれ。」

エルヴィン団長の挨拶で宴は
始まった。

私はみんなに、歌や舞を披露したり、エレン意外の新兵に挨拶をしたりそれなりに、楽しんでいた。

宴はさらに盛り上がり…

「一気!一気‼一気‼!」

酒の一気飲みが始まっていた。
エルヴィン団長はワインを。
リヴァイ兵長はウイスキーのロックを。
私は果実酒を飲んでいた。
そこに、ハンジさんがやってきた。

「神楽ぁ〜ちゃん!」
「こんばんは。ハンジさん。どうしました?」

ハンジさんは、ニマニマしながら、古そうな瓶を見せた。
「これ、私が作った果実酒なんだけど良かったら飲まない?口当たりまろやかですっごく美味しいよぉ〜?」
「いいんですか?ありがとうございます。」
私は果実酒を全て流し込み、それをグラスに注いでもらった。

「いただきます」

こくり…

口いっぱいに広がる…

薬品の…味…?

「ハンジさん…あの…これ…」

グラッ!

世界が360度回った。

「おい!神楽大丈夫か?」
「ハンジ…一体何飲ませた?」
リヴァイが瓶のラベルを見て言った。
「果実酒だけど…あれぇ〜可笑しいな神楽用に余り強くないやつなんだけどな〜」
「おい…これ、"闘争心増強剤"って書いてあるぞ?」

すると、エレン達が心配そうに
こちらに来た。

「あの…神楽さん大丈夫ですか?」
「神楽さん。部屋に行きましょ…」

一瞬だった。
手を差し伸べたエレンが

ガッシャァァァァン!

吹き飛ばされていたのだ。

ポロっ
エルヴィン団長が持ってたグラスが床に叩きつけられる。

ゆらりと立ち上がる。


「…ッ神楽…?」
ガッ、ブン‼

いきなりリヴァイ兵長の腕を掴み投げ飛ばす。

「神楽‼やめろ!」
エルヴィン団長が叫ぶ。
しかし神楽は何処かおかしかった。
あの優しい面影は何処にもない。
あるのは…

狂気な笑みを浮かべる少女。

するとニヤリ

と、笑う神楽。

次の瞬間、宴は一人の少女の暴走により、それどころでは、なくなった。

仲間に対し、対人術をかけるが
そんな生温いものではない。

まるで小さな巨人が暴れ回っているのだから。

うわぁぁぁ‼きゃぁぁぁぁ‼!

悲鳴が飛び交う。
彼女の真っ白のドレスが
フワリとなびく。

「エレン!大丈夫?!」ミカサとアルミンが投げ飛ばされたエレンに駆け寄る。

ペトラ達はリヴァイに駆け寄り、肩を貸す。

「俺は大丈夫…でも…神楽さんどうしたんだ?
俺何かしたかな…」

「エレンは何もしてないわ。分隊長が渡したお酒を飲んでからよ…」
「にしても…あれは本当に神楽さんなのか…?」
怖い…あの人はまるで小さな巨人になったように暴れてる。

すると、リヴァイ兵長が
「おい、ハンジ。あの女になに、飲ませやがった。」
睨みつけるように話す。殺気も交えて。
「あれは、捕獲用の巨人に飲ませてデータを取るものだよ。その名の通り、もともとある闘争本能
を最大限までに引き出す薬だよ。
瓶がおなじだから間違えたみたい」


ヘラヘラと笑うハンジに危機感はない

「分隊長!そんな事言ってる場合ではありません‼止める方法は?ないんですか?!」
ジャンがハンジに言う。
すると、「あるけど神楽ちゃんを気絶させれば手っ取り早いよ…」
と、私は関係ないよーとシラをきれながら言うハンジ。

唖然とする全員。
一体どうやってあの彼女を止めればいい。

そして、誰かハンジのうなじを削ぎ落としてくれと皆が思った。

気絶させるなんて…
すると、ライナーとベルトルトが
前に出た。

「…気絶させればいいんだよな…」
「なら…いけるかな…神楽さんには申し訳ないけど、訓練だと思ってやらせていただきます。」
「おまえら…大丈夫なのか?」

すると、ライナーがこう言った。
「やってみねーと分からないだろ?それに男にはやらなきゃならない時がある。」
その一言で周りの隊士達が神楽を囲い始めた。

ライナーの一言で闘争心がかきたてられたのだ。

つまり、タイマンで勝負をつけるつもりだ。
「行きますよ!」

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼‼‼

怒涛の声が神楽に向かって放たれる。


それから…5分。
まわりには神楽意外誰も立っていなかった。
彼女は華麗にヒットしていき、
次々倒れていった。

すると、エルヴィンとリヴァイが彼女前に立ちはだかった。

「神楽…いい加減酔いを冷ましなさい。」
「掃除だな…ハンジてめーやれよ勿論、全部だ。俺はやらん」

そう言うと、先にリヴァイが彼女の顔面に蹴りを入れた。
次にエルヴィンが横腹に蹴りを入れる。

例え女でも、加減はしない。

しかし、彼女は腕で攻撃を塞いでいた。

ガシッと足を掴む。物凄い力で離さない。そして
リヴァイを投げ飛ばす。
次にエルヴィンの脛にパンチを入れる。

メキッと嫌な音が耳に響く。

「くっ…!」

ドカッ!投げ飛ばされたリヴァイが飛び膝を入れる。

体制を崩したかと思いきや、直ぐにカウンターが右腹に入る。

メリメリッ

「こいつ…!」
そんなのが10分続いた。

二人の息はもう上がっていた。
なのに一切そんな素振りを見せない神楽。

団長と、兵長でも手こずる程
強すぎる彼女を誰が止めるんだと
思った瞬間。



ブスッ!

ハンジが後ろから何かを打った。

ばたり…

神楽は倒れた。

「はぁ間に合ったぁ〜薬を急いで調合して来たよ!」

いつの間にか、薬を調合したハンジにより、騒動収まった。

こうして、神楽暴走事件は幕を閉じた。
この日彼女によって医務室送りにされた人数はざっと、150余りだった。

エルヴィンとリヴァイはそれぞれ
脛と脇腹に小さなヒビが入った
だけで事に至らなかった。

その事実を伝えられた、神楽は一人一人に謝りに行ったそうだ。

皆、神楽の事故を許しお咎めなしだったが、渦中のハンジは、広間の後片付けを一人でやらされたそうだ。

その伝説は、今尚伝えられている
そうだ…。

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