おはなし1
□失敗から始まった恋*リク
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数年前の二月十四日。
私は人生ではじめてチョコ作りに失敗した。
食べれない訳でもないけど、ゴミだな、これ。
はぁ、とため息をついて公園のゴミ箱に捨てようと思ったら、一人の少女に声をかけられた。
「あの……。それ、いらないなら、くれませんか? 」
怯えた表情をした、細いというか薄い体をしたその子は研究生であることは知ってたけど、名前が思い出せなかった。それほど絡みのない子だったんだ。
「え? いいけど、不味いと思うよ? 失敗作だし」
「優子さんの作ったものはなんでも美味しいですよ」
泣きそうな顔をしてはにかむ彼女・指原莉乃を気にしはじめたのはきっとこの日からだった。
歌もダンスもうまくはないし、頭の回転はすごくいいくせに、臆病で泣き虫なヘタレで、きっとこの子は中堅止まりなんだろうな、て思っていたのが正直のところで、でも気付いたら選抜入りして、気付いたら私を追い抜いていて、センターにいて、気付いたときには私が彼女の背中を追いかけていたんだ。
背中を追いかけていくうちにいつのまにか彼女に夢中になっていて、いまは恋人関係にあったりする。