第二図書室

□僕との約束
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ギシ、と体が軋む。

「ぅ…あ…っ」

痛い。痛い痛い痛い痛い痛い助けて誰か痛いよ痛い。

ここはどこ?真っ暗で、何も見えない。

僕は今、どうなっているんだろう。もうとっくに死んでてもおかしくないと思う。

未だ体は何かにギチギチと絞められ、口元から血が伝い、顔が歪む。

「痛い…痛いッ!離してよ!…ぅあ゙…ッぁ、痛、い…!」

『これは嘘を吐き過ぎた罰だよ、修哉』

突如頭に声が響き、絞める力が強まる。

『お前は騙し過ぎた。憎み過ぎた。痛み続けた。素直にならなかった。何度も苦しんだ。ずっとずっとずっと、今も変わらない。ねぇどうして?どうしてそんな「僕」がいるの?何故どうして変わろうとしない??なぁなんでだよ、「鹿野修哉」』

一言告げる度に締め付けが強くなる。声は次第にはっきりと聞こえ、そして完全な僕の声になった。

朦朧とする意識の中で、僕を絞めるものが幼い僕自身だと言うことに気が付いた。

「僕」が手を離し、僕は地面に倒れ込む。

「はぁッ、はぁっ…」

『ねぇ、どうして?僕は悲しいよ。ねぇ修哉、どうして素直にならないの。なれないの。なろうとしないの。ねぇ修哉、ねえねえねえ???』

もう一人の僕は、ニコニコと笑顔を崩さないまま僕に近付いた。僕は後退りする。

『だって素直になれば、修哉の抱えてるもの全部無くなるんだよ。苦しくなくなるんだよ。笑いながら泣かなくてもいいんだよ。楽になるんだよ。自分を守れるんだよ。ねぇ…』

「…うるさい」

僕がやっと反論するが、もう一人の僕はニコニコと笑顔を崩さない。

「僕は自分なんかどうでもいいんだ。みんなが苦しむ姿を見るくらいなら、僕は喜んでみんなのために死ねる。僕が楽になってみんなが苦しむなんて、僕は絶対に許さない」

『そう。じゃあ、死ねばいい』

もう一人の僕は静かにそう言うと、また僕の首を締め上げた。

「っぐ…ぁ…ッ」

『僕は嫌いなんだ。修哉の喜ぶようなことが。修哉がいつでも笑っているとこが。誰にも頼らずひとりぼっちで抱え込むところが。陰で泣くところが。諦めないところが。傷付いてるのに治そうとしないところも悲しいのに笑うところもみんなのために自分を捨てるような勇気も全部全部全部、大っ嫌いなんだよ…ッ!!』

僕はいつの間にか泣いていた。もう一人の僕も、泣いていた。

もう一人の僕は唇をぎゅっと噛むと、首を絞めていた手を解き、今度は僕の体を抱き締めた。

『辛いことを我慢するな。僕にだけでもいいから、独りで抱え込むな。少しでもいいから素直になれ。傷を治す努力をしろ』

幼い僕はそういうと、僕にキスをしてにっこり笑った。

『修哉は一人じゃないんだよ。僕もいる。つぼみもこうすけもしんたろーも、みんなみんないる。困ったら、助けを呼べばいいんだ。一人で悩むことは、みんなを信じていないのと同じだ。本当に信じたいなら、幾らでも仲間を頼ればいいんだよ。』

もう一人の僕がそう言った途端、今まで暗かった景色が崩れ、一面に花が咲き乱れた。

『だから、泣かないで。ね?』

「僕」はそう言うと、ふわりと笑った。

気付けば幼い僕の姿は消え、風に舞う花びらだけが残っていた。

「……ありがとう。修哉」

僕はぽつりと呟き、目を閉じた。




目を開けた時、僕は部屋のベッドに横になっていた。

「…夢?」

僕がそう言って辺りをキョロキョロすると、どうしてかシンタロー君がいて、目が合った。

「あぁ、起きたか。大丈夫か、カノ?」

「え?大丈夫って…?」

「オレが朝ここに来たら、お前がソファで苦しそうに寝ていたから勝手に運んだんだ」

あぁ、やっぱり夢なのか。…やけにリアルな夢だった。

「そ、そっか。ごめんね?シンタロー君」

僕が申し訳なさそうに言うと、シンタロー君は微笑んだ。

「いいんだよこれくらい。仲間なんだから当然だろ?」

僕はその言葉を聞いた途端に、少しジワジワきた。

「ありがとう、シンタロー君っ!!」

僕はそういって、シンタロー君に抱きつく。

シンタロー君は少し照れながら「え?あ、お、おう」と言った。

修哉…もう一人の僕。

君との約束、ちゃんと守るよ。ありがとう、修哉。

僕は心の中で再度お礼を言って、シンタロー君に笑いかけたのだった。





いやー…難しいっすねー…
たまにはシリアスとかも書かねば脳が腐ってしまう。うん。

ここまでの閲覧ありがとうございました!
丶(・∀・)ノ

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