第二図書室

□クロハの恋愛事情
1ページ/1ページ


「……よぉ」

僕がアジトに一人で留守番をしていた時のことだった。

突然現れたそいつの外見は僕そっくりで、だけどどことなく違うっていうのは流石に僕でもわかった。

なんか……前に会ったような気がしないでもないような。

「へぇ、結構良いとこに住んでんだな」

そいつはアジトにあがるなり室内を物色し始める。

僕は何か言い返そうと口を開くけど、何か怖くて上手く言葉が出てこない。

「く、クロ……ハ?」

僕が記憶を辿って名前を出すと、クロハと呼んだ彼が振り返る。

「……オレのことか?」

「うん、そう。多分」

相変わらずノロノロした口調だけど、伝わったと思う。……ううん、伝わって。

「あぁ、そうか……オレはクロハっていうのか」

ポリポリと頭を掻きめんどくさそうにする様は、如何にもな感じがした。

「お前……コノハって言ったよな。コノハ以外に誰かいねぇのか」

「僕はお留守番してるんだよ」

初対面(?)なのにこんなに会話できるのは、クロハが何かを知っているという確信があるからなのだろう。

「あぁそうか。じゃあこの際言うが」

クロハが僕に近付き、更に顔を近付けてニヤリと笑う。

「オレお前のこと好きなんだ」

「……?」

好きって、どういうこと?

「友達として……ってことかな。え?でも僕達って友達なのかな?え、えーと……」

「違ぇよ。あ〜……なんだったか、『コイ』ってやつだ」

「コイ?魚?」

「いや違うっての」

魚じゃない『コイ』って、恋しかないじゃないか……少なくとも僕が知る中では。

「え、でも僕男だよ……?」

「あ?そんなの関係ないだろ。好きなもんは好きなんだからしょうがねぇだろうが」

そう言われて初めて、驚いたのが表情に出たと思う。すっごいびっくりしたし。

同時に顔が赤くなるのもわかった。

「な……クロハ、普通じゃないよ」

「はぁ?お前だって普通じゃない能力持ってんだろうが」

そう言われるとそうかもしれない。

……じゃなくて、

「え、や、あの……」

わたわたとしていると、クロハがまた僕の顔を覗き込む。

そのまま頭を片手で固定し、唇を唇で塞がれた。

「…っ…!?」

クロハはそれだけすると離れ、「これでわかったろ。オレは至って本気だ」とにやけた。

「え、や……ほ、本気とかじゃなくて……ってあれ?」

気付けばそこにクロハの姿は無く、テーブルの上には「また来るから」と黒字で書かれていた。さっきまではなかったから、多分これはクロハだろう。

「ま……また来るの……?」

僕は少し肩を落とすが、先程のキスを思い出し顔が火照る。

ああいうのは普通なら「気持ち悪い」とか「変だ」とかってなるんだろうけど、僕があの時考えたのは「もっとやってほしい」だった。なんでこんなこと考えたんだろう……

痛みを訴える頭を抱え、自分の部屋へとフラフラ戻っていった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ