第二図書室
□変な奴だ
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(カノside)
帰ったあともなんとなく気になって、あのコノハをそのまま黒くしたような奴のことを考えていた。
セトのように心を読み、コノハに似た外見を持っている。
何より僕が欺いた姿を完全に無視し、素顔を見ることができていた。これが不思議でなくてなんなのか。
外見については、もしかしたらコノハの双子やら兄弟やらってこともあるかもしれない。
だが、その確率は五分五分と言える。
双子にしてはあまりにも似すぎていたし、身長も同じくらいだった。目の色と髪の色が違うくらいで、あとはほぼ同一人物のような姿。
そして、僕がコノハだと思って話しかけ、名前を出した時に反応した、「もううんざりだ」と表情が語っていたので恐らく……A.コノハに間違われたのが何度目かわからないくらいに多くてうんざりだった。
B.それかコノハを知っていて、自分にとって不都合である人物だから。
あるいはどちらか……ということに絞れそうだ。
やはりコノハに何か関係があると考えよう。
「にしても……僕あいつとの別れ際になんか言ったよなぁ」
なんだったか……相手の名前を呼んだような、そんな感覚に襲われた。
その時僕は確信してその名前を呼んだ。今では思い出せないが。
「……なんかありそうだね」
そう呟いて、ベッドに突っ伏した。
疲れていたのか、眠気はすぐに僕を飲み込んだ。
次の日、僕は昨日と同じ時間にまたあそこへ向かうことにした。
コノハに何か聞こうかとも考えたが、コノハはあまりアジトに顔を出さない。
ヒビヤ君でさえわからないらしいし、まぁしょうがないかと思ってその時間を待った。
昨日アジトを出た時間を針が指す。
部屋を出て、雑誌を読んでいるキドに「出掛けてくるー」と声を掛ける。
「そうか。あまり遅くなるなよ」という言葉を聞いてから外へ飛び出した。
昨日と同じ場所につき、きょろきょろと辺りを見回す。
……いた。やっぱり同じ格好で。
「やぁ、また会ったね!」
僕は極力待っていたというこのがバレないように話し掛けた。
彼は僕と目を合わせると、めんどくさげに「わざわざ待ってたのかよ」と呟いた。あららー、やっぱバレちゃうんだね。
「うん、まぁね。……でさ、君」
「あ?」
「君、能力者なわけ?」
僕が率直に問うと、そいつはクスリと笑った。すっごい悪質に。
「まぁ、そう思ってろ」
なんでこの人こんなに……なんというか、正確に答えないのだろう……
「オレの勝手だ」と不機嫌に返す様を見ると、やっぱコノハじゃないなと思う。だって性格正反対だし。
「そっか。ねぇ、君名前なんていうの?」
「名前?そんなもんねぇよ」
「え、えぇ?」
「つーかお前、オレの名前知ってるんじゃねぇのかよ」
逆に質問されてしまった。
多分、昨日の僕の発言だろう。なんて言ってたっけ……うーん……
「思い出せねぇのか」
そいつは目を瞑ると、くるりと向きを変えて歩き出した。
「よし、じゃあ僕がつけてあげよう」
「はぁ?」
「コノハに似てて……黒い……黒いから……」
ぶつぶつと呟きながら思考を巡らせて、辿り着いた答えはなかなかいいものだった。
てか僕他人になんて優しいことをしているのだろう。
「『クロハ』なんてどう!?」
そういうと、彼はひどく嫌そうな顔をした。
「え?気に入らないの?いいじゃんクロハ!!」
他人の名前付けに何を興奮しているんだ僕は。
「あっそ。まぁしょうがねぇから名乗ってやるよ」
「え?何ツンデレ?会ってそうそうツンデレですk……ちょ、ごめん、ごめんって」
クロハが蛇睨みを利かせたので、訂正しつつも謝る。
なんだこれ。でも楽しいな。
「会って早々こんなに馴染めるこのなんてあるんだね!」
僕がそう言うと、クロハはぷいっと顔を背けた。
「知るか、勝手に思ってろ」
「ちょ、ひどい!」
警戒しまくってた僕のほうがなんかノリノリだったせいか、今までのシリアスな雰囲気は何処へ行ったのか。
「ねぇクロハ、クロハどこに住んでんの?」
「さぁな」
「え、ちょっ、はぐらかさないでよ〜」
ひどく迷惑そうな顔をしたあと、渋々という感じで紙とペンを取り出し、サラサラと住所をかきだした。ご丁寧なものだ。
それをぴっと僕に差し出すと、「じゃあな、オレは帰る」といってすたすた歩いていった。