ジンユウ

□Coming spring and hope...
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「人は殺しちゃいけないよね」

寒い冬も終わりを告げる時期ではあるの に、まだ風は寒く、暖房をつけたダッグ シャトルの男子部屋。向かい側のベッド に腰掛けたユウヤが唐突に口にした疑問 に、ジンは驚きましたが、それでも(逆 に、こういう時こそ表情を変えてはいけ ないのかもしれませんが)ポーカーフェイ スを保って、そうだな、と肯定します。

「そうだよね」

ユウヤはどこか安堵したような、それで いて痛いところをつつきまわされたよう な複雑な心境を如実に反映した表情を浮 かべました。それに違和感を感じて、ジ ンは心配になります。なにを思い詰めて しまったのでしょう。ジンの表情を見て 安心したのか、それとも、心配はかけら れないと思ったのか、どちらなのかは定 かではありませんが、ユウヤは俯き加減 で一言

「僕、人殺しかもしれない」

「なんだって?」

ジンは思わず聞き返しました。言葉通り に受け取ったからです。しかし、考えて みれば、おかしな話。"人殺しかもしれな い"という表現は、普通しません。人殺し は、"なる"ものです。"かも"という不確定 要素はないはずです。未遂事件なら別で すが。そんなジンを見て、ユウヤは慌て たように、しかしゆっくりと話し始めま した。
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