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□クローズドサークル2
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「ふぁーあ、おはよ。」
「おはよう、笠置。眠そうだね。寝れなかった?」
「うんにゃ、ぐっすり。」
「それは・・・いいことだね・・・。」
またこいつか。後ろから声をかけるのは止めて欲しい。
・・・ここまで存在感がない人は珍しいと思う。
「あぁ、今野君。おはようございます。」
「うん・・・、おはよう・・・。」
「・・・?何で廊下で話してるの。ロビー行けば椅子もあるのに。」
「あ、笹原さん。おはようございます。」
「一緒にロビー行くか。」
「うん。てか、ロビー行こうって言ったのうちだし。」
そんな話をしながら4人でぞろぞろとロビーに向かう。
七瀬と笹原はよく眠れなかったのか、目をこすったりして眠そうだ。
今野は昨日と変わらないから分からない。
ロビーに人はいないだろうと思っていたら、坂井と及川がいた。
「皆おはよー、よく眠れた?」
「私はあんまり・・・。」
「うちらの中で熟睡したのは男だけ。」
「あー、やっぱ眠れないよねー、こんな不気味なホテルじゃ。」
なんか静かだと思ったら、及川が喋っていない。
「及川、どうした?顔が青いぞ。」
「・・・なぁ、部屋の中、よく調べたか?」
昨日の夜は何も考えずに寝てしまった。部屋を調べるなんてこと、している訳がない。
「いや。・・・何かあったのか?」
「あぁ。外には持ってきてないが、部屋に戻ったらベッドの近くをよく調べて欲しい。薄い本が入った箱があると思う。」
「・・・読んだんだな?」
「あれに書いてあったのは、多分実験の内容だ。」
「実験って、昨日放送で流れたあれのこと?」
「そうだ。」
「・・・部屋に戻ったら調べてみる。それより、皆お腹空かない?」
「昨日の夜から腹減ってる。」
「キッチンとか、ないんでしょうか。」
「あ、キッチンなら向こうにあったぞ。俺は何も作れないからよく見なかったけど。」
「え、あんたいつの間に。」
「お前がトイレ行ってる間。」
そんな短時間で見つけて、しかも戻ってこれたということはここから結構近いのか。
水で騙すのももう限界だ。キッチンがあって助かった。
あとは、飯を誰が作るかだな。俺と及川が無理。七瀬は作れた。他の奴らは知らない。
「え、ちょっと待って。冷蔵庫の中全然入ってないんだけど。」
「え!?じゃあどうするのよ?」
「ここに・・・大きい箱があるよ・・・。」
そう言いながら今野が指差したのは白くてとにかくでかい箱。
「お、本当だ。中に食料が入ってたりして。」
「そんなことある訳・・・!?」
入ってた。出来上がった朝飯が。触ってみたらまだ温かい。
あぁ、良い匂いで余計腹が減った。
「ど、どういうこと・・・?何で温かいご飯が・・・。」
「な、なんか怖いんだけど。これ、食べるの?」
「・・・食べないと俺、倒れるぞ。」
「俺もー。腹へって死にそう・・・。」
「・・・毒見係ー、やる人ー。」
「「やるっ!」」
笹原は俺たちが手を挙げることが分かっていて言ったのだろう。俺たちを見て「やっぱりな」という顔をしている。
及川は昨日と同じくらい元気になってきた。
まだ会ってから1日も経ってないのに、こいつが元気ないと違和感を感じるようになってしまった。
「お、上手い!」
「飯は普通のホテルより美味しいな。」
「異常なし、かな。うちらも食べようか。」
「立って食べてないで・・・ロビー行って食べようよ・・・。落ち着いて食べれるよ・・・。」
今野の言うとおりだ。俺たちは食べかけの朝飯を持ってロビーへ向かった。

「あー、食った食った。」
「ごちそうさまでした。」
「美味しかったー。」
こんな不気味なホテルの中でも、皆食欲はあるようで、残す人はいなかった。
さっきは気付かなかったが箱の横には説明が書いてあり、食べ終わったら皿を入れるように書いてあった。
正午までは自由な場所で自由に過ごす。
図書室などがあるらしく、七瀬と笹原は一緒にそこに向かった。
この2人は昨日と今日で随分仲良くなったらしい。
後から今野も向かったが、女2人の中にいるのは今野でも抵抗があったらしく、何冊か本を抱えてすぐに戻ってきた。
俺は正午まで部屋を調べることにした。及川が言っていた箱が気になった。
及川の言葉を思い出しながら自分の部屋に入り、ベッドの近くを調べた。
が、箱は見つからない。ベッドの下ものぞいたが何もなかった。
「・・・あ。」
ベッドに引き出しがついていた。開けるとそこには、茶色い箱。本以外にも何か入っているのだろう、ずっしりと重い。
鍵穴などはないが、ふたに画面がついている。
画面をタッチしてみると、確認中という文字が出てきた。
指紋を確認しているのだろう。
3秒くらいするとカチリという音がして、自動で蓋が開いた。
指紋を確認するということは、何か重要なものが入っているんだろう。
一番上に置いてあったのは薄い本。及川が言っていたものだろう。
問題はその下に入っていたものだ。
これは、見てはいけないもの。触ってはいけないもの。
及川が見たものは、及川の顔を青くしたのは薄い本の内容なんかじゃない。本当はこれだったんだ。
心臓がドクドクいっている。呼吸が荒くなってきた。
「・・・っ!」
見るな。誰かにそう言われた気がして、慌てて箱を閉めた。
俺は、何も見ていない。触ってもいない・・・はず。
見ていない、見ていないんだ。
「・・・・・・。」




―拳銃なんか、見ていない。

2日目 午前
処刑者・・・なし 犠牲者・・・なし

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