白の魔女セル
□美しき姉
1ページ/5ページ
先日、姉であるシナモンが女王候補に選ばれたと聞き、村の近くにある森から帰ってきたセルはケーキを焼いていた。
もちろん、シナモンのお祝いのためだ。
ちょうど焼き上がりデコレーションも終わったところでコルヌの怒鳴り声が外から聞こえた。
「なんだァ!?この放蕩息子が、帰ってきてもおまえの寝場所はねーからな」
ポワーヴルが長い放浪から帰ってきたらしい。
怒り心頭という形相で家に入ってきたコルヌにセルは眉をさげた。
「ぱぱ、わたし……」
「……いいんだ、おまえは。辛くなるだけだ……」
「うん……」
心は結晶化する。
深く相手を愛し、そのハートが真っ赤になったとき、そのハートを相手に捧げなくてはならない。
魔界の人々のハートは一つ。理由は心のエネルギーが少ないから。
セルはその事実をひどく悲しんだ。
自分を愛したがために真っ赤な真紅のハートを残して逝ってしまうことを。
今もそのハートたちは森のセルの家に保管されている。
写真と思い出を綴った日記とともに。