短編

□Spring Love
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春は恋が始まる季節…とか誰かが言ってた気がする。

まぁ色々新しいことばかりだし…それもそうかなって気はするけど…

(まさか渚くんから告白されるとはなぁ…)


授業中渚くんの小さな後ろ姿を見て、何度目かわからない溜め息をつく。




「僕カルマくんのことが好きなんだ」

桜の木の下で、渚くんからそう告げられた。

「ごめん、俺渚くんのことそういう風には見れない」

俺がそう言うと、その大きな目に涙が溜まっていくのがわかった。

でもそれが零れるのを懸命に堪えて渚くんは無理矢理笑った。

…そんな顔させたいわけじゃないのに。

「うん、わかった。でもこれからも友達でいてね」

そう言ったのは渚くんなのに…あれから明らかに渚くんに避けられている。



授業が終わった。

渚くんが振り向いたからドキッとするけど、渚くんは俺の方を見ることもなく杉野と話し始めた。

杉野がなんか渚くんに言ったあと、渚くんの顔が赤くなった。

…何話してんだろ。

杉野と話しているときの渚くんは楽しそうだ。

…もしかして、もう俺じゃなくて杉野のことが好きだったりするのかな。

「…カルマ」

「なに、千葉」

「すっげー怖い顔してんぞ」

「え」

前の席の千葉に指摘されて初めて眉間にすごい皺をよせていたことに気付いた。

…なんで、俺こんな顔してんの。



放課後。

日直の渚くんが日誌を出しに行っている時、杉野に話しかけた。

「あのさぁ杉野」

「ん?」

「お前は神崎さんのことが好きなんだよね」

「ちょっ…!ま、まぁ…そうだけど、なんで今更」

狼狽えながら肯定した杉野を見て、何故かほっとした。

「や、別に。」

「なんだよそれ。」


怪訝そうに俺を見たあと、時計を見て杉野が慌てだした。


「やっべぇもうこんな時間かよ!野球の練習遅刻するし!ごめんカルマ渚に先帰るって言っといて!」

「え」

俺の返事も聞かずに杉野は教室を走って出ていった。

…まじで。
勘弁して、ほんと。


少しして渚くんが教室に戻ってきた。

俺を見て身を強張らせる。その態度に少しムッとした。

俺の横をすり抜けようとする渚くんの腕を掴む。

「カルマくん…?」

…なんでそんな怯えた目すんの。

「杉野が野球あるから先帰るって」

「あっ、そうなんだ…ありがとう、じゃあまた明日ね」

早口でそう言って俺から逃げようとするから、ますます腹が立った。

…逃がすかよ。

「渚くん、じゃあ俺と一緒に帰ろうよ」

嫌なんて言わせない。


渚くんは目を泳がせたあと、消え入りそうな声で「うん…」って言った。
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